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- 新自由主義ってどういう意味でどういった考え方なの?
- 新自由主義のメリットとでデメリットは何だろう?
本記事では、こうした疑問にお答えします。
新自由主義という言葉を、新聞や書籍、ネットの経済コラムなどで目にする機会は多いと思われます。なんとなくはわかっているけれど、説明を求められると答えられない…という方もいらっしゃることでしょう。
ネオリベラリズム、略して「ネオリベ」とも呼ばれるこの考え方は、日本経済とどう関わっているか? 本記事では、新自由主義について解説します。
【新自由主義のポイント】
- 官営から民営化することによる経済の活性化
- 格差の拡大が新自由主義の課題
新自由主義とは?
新自由主義とは、「小さな政府、市場の自由」を目指す考え方です。
主要産業が国有化され、公共事業が広く行われる「大きな政府」をやめて、さまざまな産業の民営化を進め規制緩和を行うことで、市場を活性化すべきであるという主張を持っています。
新自由主義が台頭してきたのは1980年代のことで、それまでは国家の経済的介入により雇用や社会保障が守られるべきという考え方が主流でした。それは、企業が自由に事業を行う放任主義的な国家のあり方が、世界恐慌をもたらしたという反省があったためです。
しかし、今度は政府が市場を囲い込み過ぎたようです。経済的停滞が起こるに従って「小さな政府、市場の自由」を求める声が高まり、世界的、同時発生的に新自由主義をもととした政策が実行されるようになりました。
新自由主義の経済史
実際にどのような新自由主義的政策が行われたのか、経済史を紐解いてみましょう。代表的な出来事が4つあります。
アメリカ・レーガン大統領のレーガノミクス
「レーガノミクス」は、1980年代にアメリカのロナルド・レーガン大統領が行った経済政策です。
当時、アメリカはスタグフレーションと失業に苦しんでいました。そこで減税を行って家計の活性化を狙い、規制緩和によって市場経済の回復を目指します。
また、社会保障費を縮小し、軍事支出を拡大することで経済発展を図りました。
ちなみに、安倍首相が掲げている経済政策「アベノミクス」は、この「レーガノミクス」が由来です。「ミクス」は、「エコノミクス(経済学)」のこと。
イギリス・サッチャー首相のサッチャリズム
20世紀のイギリスは、「ゆりかごから墓場まで」がキャッチフレーズになるほど福祉で守られた国でした。
しかし、そのぶん国際経済に遅れを取ることになってしまい、経済停滞が深刻化したことを憂いて新自由主義に舵を取ったのが、マーガレット・サッチャー首相でした。
1980年代、サッチャー政権が確立するとサッチャリズムの名のもとに電気、ガス、水道、航空といった国営事業が次々と民営化され、また規制緩和が行われたのです。
そして所得税減税を推し進め、それと引き換えに消費税を増税して国民に家計管理を強く意識させることを目指しました。
中曽根康弘首相の三公社民営化
日本で新自由主義に基づく政策を行った人物として有名なのが、1982年から87年まで在任した中曽根康弘首相です。
日本専売公社、日本電信電話公社、日本国有鉄道の三公社を民営化し、半官半民だった日本航空の完全民営化を進めました。
小泉純一郎首相の聖域なき構造改革
2001年から2006年まで在任した小泉純一郎首相もまた、新自由主義の色濃い政策を行いました。
「聖域なき構造改革」をスローガンに、郵政事業と道路四公団を民営化し、小さな政府の実現を目指すことになったのです。また、労働者派遣法の規制緩和により、派遣社員として働く人の数が増加することとなりました。
新自由主義におけるメリットとは?
新自由主義では、さまざまな国営事業を民営化することにより、自由競争が生まれます。政府による規制がなくなることにより、参入する企業が増え、経済が活性化されるのがメリットのひとつです。
かつて、公衆電気通信事業は電電公社(日本電信電話公社)が官営で運営されていましたが、 1985年に通信の自由化が行われ、日本電信電話株式会社 (現・NTT)として民営化されました。
これも新自由主義の考えに基づいたものです。今でこそ電話事業の自由化は当たり前になっていますが、第二電電(現・KDDI)や日本テレコム(現・ソフトバンク)が参入したことのより、通信会社を自由に選べるようになりました。
一社独占の状態では価格競争が起きず、選択もできない状態になりますが、新自由主義から生まれた自由競争により、企業間の価格競争によって消費者が安い価格の商品を選択できるようになります。
適度な価格競争が生まれると経済が活性化するので、新自由主義のメリットとしては理想的であると言えるでしょう。
新自由主義におけるデメリットとは?
新自由主義は自由競争による経済活性化、価格の値下げというメリットがある反面、価格競争が激化するとデフレが起こるリスクがあります。
身近な例でいうと、牛丼チェーンの価格競争がありましたよね。牛丼チェーン大手3社が値下げ競争を繰り返した結果、自分たちの首を締めてしまったのです。
値下げは消費者にとってはありがたいですが、行き過ぎた価格競争は業界にとってマイナスになる恐れがあります。いくら自由に競争できるからといって、ビジネスは持続可能なシステムでないといけません。
デフレは安い価格で商品を変えるという商品者にとっての利点がある一方で、企業の業績が悪化することで給料が下がる可能性があります。そうなると、結局は価格が下がってもお金が減ってしまいますし、最悪の場合は会社が倒産して失業者が増えてしまうリスクもあるのです。
ある程度の値下げは歓迎できますが、牛丼チェーン店のように価格競争が激化すると、企業が疲弊し、その影響で収入が減ってしまうという悪循環が生まれてしまいます。このように、新自由主義に伴う価格競争は、生活に密接に関係しているのです。
新自由主義の課題
新自由主義に基づいた政策の中には、大企業に有利になるものが多いのも事実です。資金力も人材力もある大企業が市場を独占する状態は、果たして新自由主義だと言えるでしょうか?
中小企業にとってメリットのある政策はというと、実現されていないものが多く存在します。大企業には有利になる政策は実施されると、中小企業はますます経営が苦しくなる一方です。
新自由主義は、中小企業の経営を助ける政策が未実行であるのが大きな課題であると言えます。
このままでは、資金力を持つ大企業はさらに金持ちになり、資金力の乏しい中小企業は重税によってますます経営が苦しくなる一方です。新自由主義によって生じる格差の拡大は、解決すべき課題と言えるでしょう。
今後の日本について
各政府が取った新自由主義的政策は賛否両論あり、また景気の変動や国内外の経済状況によって施策の結果も変わるため、簡単に成否を判断することはできません。
しかし、国家が管理していた主要産業や市場が、新自由主義的政策によりじわじわと民間の手にゆだねられてきたことは確かです。
一方で、国家によって雇用が守られる産業が減り、福祉も乏しくなったのだとしたら、弱い立場の人をどう守り、いかに工夫して働いてもらうかというのは、他ならぬ民間の課題ということになります。
市場を民間に開くことによって格差が広がったという批判もありますが、企業がイニシアティブを取り、また一人ひとりが声をあげることで、住みよい世の中を作り上げていく時代が来ているのではないでしょうか。
おわりに
新自由主義は、国民が福祉や雇用保障と引き換えに、自由と責任を受け取る経済思想です。五体満足で健康で、経済についての知識も仕事の能力もある人にとっては、願ったり叶ったりの考え方といえるでしょう。
しかし世の中には、障害や病気、介護や子育て、教育の機会が与えられないなど、さまざまな事情を抱えた人がいます。働く人たち自らが「誰もが協働できる社会」を実現していくことが、これからの時代に必要とされているといえるでしょう。
そのための施策がなされるかどうかを、労働者である私たちはチェックしていかなければなりません。
[最終更新日]2019/03/04
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