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「同一労働同一賃金」と言えば、言葉の通り、「同じ仕事内容なら同等の賃金をもらえる」ということです。でも、1から10まで同じ仕事をしている人というのはむしろ珍しいですよね。具体的には、どんなことを指すのでしょうか。企業も、そして労働者も、同一労働同一賃金の意味やあり方について、詳しく知っておきましょう。
同一労働同一賃金とは?
同一労働同一賃金とは、例えば正社員と非正規社員の仕事内容が同じである場合に、非正規社員の給与や福利厚生を正社員と同様にまで引き上げようという考え方です。政府は、平成28年に「同一労働同一賃金ガイドライン案」を発表し、とくに有期雇用やパートタイムといった非正規労働者の給与水準を上げようとしています。
ただ、たとえ同じような仕事をしているとしても、正社員とパートでは、責任の重さが違うというケースがあります。何かあったときにペナルティーを受けるのは、正社員です。ガイドライン案では、このことによって生じる待遇差は、合理的なものであると認めています。ただ、会社の業績への貢献が同じ部分について、待遇差が生じることは認めていません。
つまり、「正社員だから」「非正規社員だから」という理由で給与が決められるのではなく、会社への貢献度合いによって給与が決まるのが、同一労働同一賃金の考え方といえるでしょう。給与はみんなが同額になるというよりも、むしろ今よりバラツキが出そうです。
同一労働同一賃金で期待されるメリット
非正規労働者のモチベーションが上がる
これまで、正社員と同じ仕事、責任を負っているのに「非正規だから」という理由で待遇が抑制されていた有期雇用者やパート、アルバイトは、正社員と全く同じ条件で働くことになります。モチベーションはぐんと上がることでしょう。
「どれだけ頑張っても、給与は上がらない」と考えていた人も、頑張れば頑張るほど給与が上がるとしたら、より難しい仕事にチャレンジする意欲が湧いてくるかもしれません。パフォーマンスが向上するのは、個人にとっても企業にとっても大きなメリットです。
正しい評価が得られやすくなる
今までの日本型雇用では、雇用形態のほかに勤続年数によっても給与が変わる傾向にありました。若く優秀な社員は、腑に落ちないと感じる面もあったことでしょう。同一労働同一賃金なら、より正しい評価が得られやすくなります。「転職すると、雇用年数が少ないぶん給与が下がる」といった心配もいらないので、新しい環境にどんどんチャレンジできます。
職場の空気が明るく変わる
今まで、正規と非正規で明らかに不合理な待遇差があった職場は、待遇が公平になされることで、職場の空気が明るく変わる可能性があります。正規、非正規間のギスギスした人間関係が緩和されることが期待できます。
同一労働同一賃金のデメリット
人件費が高くなる
非正規社員の給与を底上げすれば、人件費がぐっと上がります。とくに飲食業やサービス業のなかには、7~8割を非正規で回している企業もあります。企業は、今まで非正規に頼っていた分だけ、人件費の高騰に悩まされることになるでしょう。
給与が下がる可能性がある
正社員は、非正規を含めた報酬の見直しがなされた結果、給与が下がる可能性があります。同一の労働に対して報酬を平等に再分配すれば、非正規との待遇差に恩恵を受けていた社員の給与が下がるのは必然でしょう。
企業が取り組むべき同一労働同一賃金のあり方
正規、非正規、勤続年数で給与を変えるのは、同一労働同一賃金と比べれば、むしろ簡単なことです。これからの企業は、現場にどんな仕事があり、誰が何を行っているのかを詳細に把握して、適切な賃金水準をもとめなければなりません。
また、日ごろ目には見えない労働、例えば「正社員としての責任」について、どれほどの待遇をもうけるのかも悩ましいところです。いかに合理性のある報酬水準をもとめられるか、社員にも納得してもらい、経営を圧迫しない賃金の落としどころはどこかを、企業は正確に判断する必要があります。
おわりに
同一労働同一賃金という考え方は、働く側から見ればごく当然に実現してほしいものです。しかし、実際に運用しようとすると、何をもって同一労働とするのか、どの労働にいくらの報酬をつけるのか、答えを決めるのは簡単ではありません。
同一労働同一賃金は、大企業では2020年度、中小企業では2021年度から施行される見通しです。初めのうちは混乱が起き、労働者の給与は大幅に変動することになるでしょう。それも変革期特有の事態とわきまえ、本当に公平な働き方とは何かを、日本全体で学んでいく必要があると思われます。
[最終更新日]2018/09/10
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