【実施レポート】中小企業が抱える賃上げ課題解決ラウンドテーブル

開催概要

開催日時 2026年6月22日(月)15:00〜16:00
会場 日本人事経営研究室株式会社(東京都渋谷区広尾1-6-10 Giraffa 7F)
主催 日本人事経営研究室株式会社
登壇者 日本人事経営研究室株式会社 代表取締役 山元浩二
税理士法人Farrow Partners 代表社員 福岡雅樹氏
高崎トーヨー住器株式会社 代表取締役 富沢哲夫氏

開催の背景

物価高騰や深刻な人手不足を背景に、中小企業においても賃上げへの対応が急務となっています。しかし、多くの企業では十分な原資を確保できず、苦しい経営判断を迫られているのが実情です。

弊社では今回、全国の中小企業で働く一般社員400名を対象に「人事評価制度と経営計画の有無」が賃上げの実態および働きがいに与える影響を調査しました。その結果、制度の有無によって賃上げ実施率に約2倍の格差が生じていることが明らかになりました。

本ラウンドテーブルでは、この調査結果をもとに、実際にビジョン実現型人事評価制度®を導入し賃上げと組織成長を実現された2社をお招きし、その実態と解決策についてお話しいただきました。

当日のプログラム

  1. 主催者挨拶・弊社のご紹介(山元)
  2. 大企業と中小企業の賃上げ格差について
  3. 人事評価制度と経営計画の有無による賃上げ格差の実態
  4. 「持続的な成長と人材定着を実現する仕組み」とは
  5. 導入企業による事例紹介(Farrow Partners・高崎トーヨー住器)
  6. 質疑応答

レポート

「賃上げできる会社」と「できない会社」の分岐点
人事評価制度と経営計画が中小企業を変えた2つの実話

―「賃上げしたいのは山々だが、原資がない」―
―「うちみたいな規模に人事評価制度は大げさだ」―
こんな声を、中小企業の経営者からよく耳にします。

物価高騰と深刻な人手不足が重なる今、賃上げは中小企業にとって避けられないテーマになっています。しかし現実は厳しく、大企業の平均賃金が約45万円であるのに対し、中小企業は約38.5万円。賃上げ率で一時的に差が縮まっても、絶対額の差はなかなか埋まりません。

弊社が全国の中小企業社員400名を対象に実施した調査では、驚くべき実態が明らかになりました。人事評価制度と経営計画の両方を運用している企業の賃上げ実施率は73.0%。一方、どちらも運用していない企業では38.0%にとどまります。制度の有無だけで、賃上げ実施率に約2倍の格差が生まれているのです。

今回は、弊社のビジョン実現型人事評価制度®を導入し、賃上げと組織の成長を実現された2社の経営者に、導入の経緯とその後の変化についてお話しいただきました。

なぜ中小企業は賃上げできないのか――構造的な3つの課題

そもそも、なぜ中小企業は賃上げが難しいのでしょうか。弊社代表の山元は、25年間・793社以上のコンサルティング経験から、中小企業が陥りやすい「3つの構造的課題」を指摘しています。

第一は「属人化」です。仕組みがなく、優秀な個人の力に頼り切った状態では、その人が抜けた瞬間に組織が揺らいでしまいます。ノウハウが共有されず、生産性は個人の能力の上限に縛られてしまいます。

第二は「リーダーのマネジメント力不足」です。中小企業では、その部署で一番仕事ができる人がそのままリーダーに就くことが多くなっています。しかし、仕事ができることとマネジメントができることは別物です。リーダーとしての役割を学ぶ機会も仕組みもないまま、「リーダーなんだからちゃんとしろ」とだけ言われても、組織は育ちません。

第三は「経営計画・人事評価制度の不在」です。制度がそもそも存在しないケースに加え、作ってはいるが形骸化している、あるいは過去に導入を試みたが失敗してやめてしまった、というケースも少なくありません。

この3つが絡み合うことで、賃上げの原資を生み出す仕組み自体が存在しない状態になってしまっています。逆に言えば、この構造を変えることができれば、賃上げの道は開けます。

導入事例① 税理士法人Farrow Partners

「絵に描いた餅」の失敗から学んだこと

神奈川県横浜市を拠点とする税理士法人Farrow Partners(スタッフ19名)の代表社員・福岡雅樹氏が、人事評価制度の必要性を感じたのは、スタッフが5〜6名になったころでした。

「このままではスタッフが将来のキャリアを描けないと思い、自分で人事評価制度を作って伝えました。そうしたらメインのスタッフが3人立て続けに辞めてしまったんです」

原因を聞いて、福岡氏は衝撃を受けたといいます。問題は評価制度の中身だけではありませんでした。ポジション定義を明確にするために「マネージャー」を「アシスタントマネージャー」に変更したことが、当事者には「降格」と映っていたのです。さらに、ビジョンや経営計画との連動がないまま制度だけを示したことで、「この事務所がどこへ向かっているかわからなくなった」という不安を生んでしまっていました。

「自分の人格を否定されたくらいつらかったです」と福岡氏は振り返ります。将来を見据えてやったことが、逆にスタッフの離職を招く結果になってしまいました。

転機は、弊社代表・山元の書籍との出会いでした。「経営理念・経営計画に沿った人事評価制度でなければ意味がない」という内容が、自分がぼんやりと感じていたことと重なり、弊社へのご相談・導入に至りました。

賃上げ率5.3%を実現した「2つの要因」

導入当初は「外部コンサルが作ったもの」という感覚がスタッフの中にあり、否定的な声も少なくありませんでした。しかし1年半ほど経つと、状況は変わり始めます。スタッフからのフィードバックを取り入れながら評価基準を改善し続けたことで、制度は「事務所自身のもの」へと育っていきました。

そして2025年度、Farrow Partnersは賃上げ率5.3%を実現しました。福岡氏はその要因を2つ挙げます。

一つ目は「評価の納得度向上」です。評価結果が見える化されたことで、社員一人ひとりの貢献に見合う対価を根拠を持って支払えるようになりました。個々の成長に合わせた対価設定ができるようになったことで、「なんとなくの賃上げ」から「根拠に基づいた賃上げ」へと変わったといいます。

二つ目は「原資の確保」です。クライアントの工数と単価のバランスを分析し、全社員で目標値を共有することで収益基盤を強化。税理士事務所の平均と比べて1.2〜1.3倍の生産性を実現しています。さらにAI活用による業務効率化はスタッフ発信で始まり、年間約200万円のコスト削減につながっています。ビジョン実現型人事評価制度の「アクションプラン(戦略の実行計画)」でこれらを社員に任せて実行することで、浮いた原資を社員への還元に回す仕組みが整いました。

「評価結果の見える化で根拠に基づいた賃上げができるようになりました。アクションプランで原資をしっかり確保できたことで、賃上げが実現できています」

組織の安定も着実に進んでいます。離職率は2025年中に57%改善し、新卒に近い形で入所したスタッフが3〜4年でウェビナー登壇やプロジェクトリーダーを担うまでに成長しました。

「経営理念・経営計画・人事評価制度を一気通貫で整えたことで、成長のキャリアパスをスタッフに見せられるようになりました。定着率や採用面でも有利に働くと感じています」

導入事例② 高崎トーヨー住器株式会社

「個人商店」から組織へ――過去最高売上の舞台裏

群馬県高崎市を拠点に、住宅・ビル用サッシや内窓リフォームを手がける高崎トーヨー住器株式会社(社員43名)。1971年創業のこの会社で、2代目社長・富沢哲夫氏が先代から経営を引き継いだのは約10年前のことでした。

「本当に突然で、『明日から社長をやれ』くらいの感じでした。何もわからないまま経営を始めた状態です」

当時の会社は、いわば「個人商店の集まり」でした。担当営業によって見積もりの金額がバラバラで、依頼の仕方も人それぞれ。ルールらしきものはあっても、すべてが属人的で個人の裁量に委ねられていました。売上は上がったり下がったりを繰り返し、社員の入れ替わりも激しい状態が続いていました。経営理念は一応存在していたものの、「そういえばそうだったな」という程度で、実際の業務に根付いていませんでした。

「課題が多すぎて、どこから手をつけていいかわからない状態でした。とにかくゼロから変えたいと思って、経営理念の見直しから始める必要があると感じていました」

そのタイミングで弊社のビジョン実現型人事評価制度®をご導入いただくこととなりました。

「合わない人が去り、残った社員の働きがいが上がった」

制度を導入すると、会社の方向性が明確になりました。それによって富沢氏が予想していなかった変化が起きます。

「後ろ向きな発言が多く、何をするにも否定から入るような古参社員が数名いました。制度の運用を徹底することで会社の方向性が明確になると、そういう人たちは自然と居づらくなって、最終的に全員が会社を去っていきました」

その後の約1年間は大変だったといいます。しかし、残ったスタッフの働きがいは明らかに上がりました。発言しやすい雰囲気が生まれ、チャレンジしやすい環境が整っていきました。

毎月のプロジェクト会議や社内のチャレンジ面談が定着し、以前は出てこなかったような積極的な意見が現場から上がるようになりました。表彰制度も、スタッフからのアンケートをもとに社員発信で生まれた取り組みです。

「一番大きな変化は、会社として一つのことを継続してやり遂げられるようになったことです。以前は何をやっても続かなかった。それが変わりました」

若手・30代の社員が増え、育成スケジュールも整備されました。採用面でも、人事評価制度を面談で見せることで応募者の反応が変わり、入社までの歩留まりが上がったといいます。この変化も「想定していなかった」と富沢氏は言います。

そして、個人商店的な状態から「組織」へと変わった会社は、過去最高売上を達成しました。

2社に共通する「変化のパターン」

業種も規模も異なる2社ですが、弊社の制度をご導入いただいた後の変化には、共通するパターンがあります。

まず、導入当初は必ず「戸惑い」があります。外部コンサルが入ることへの違和感、細かい評価基準への戸惑い、慣れない面談の仕組みへの抵抗。これはどの会社でも起きることです。しかし1〜2年かけて運用を続け、社員のフィードバックを取り入れながら改善していくことで、制度は「自分たちのもの」へと変わっていきます。

次に、両社とも「採用への波及効果は想定外だった」と口をそろえます。人事評価制度を整えることが採用競争力につながるとは、導入前には考えていなかったといいます。しかし実際には、求職者に制度を見せると「こんな事務所・会社は初めて」という反応が返ってきます。応募数が爆発的に増えるわけではありませんが、面談から入社までの歩留まりが確実に上がります。制度が「この会社で働き続けられる」という安心感を与えるからでしょう。

そして最も重要なのが、賃上げは「原資を生み出す仕組み」があってはじめて実現するという点です。給与を上げたいという気持ちだけでは何も変わりません。経営計画で10年後のビジョンを描き、そこに向かって社員一人ひとりの役割と成長を紐づける人事評価制度を運用することで、組織全体が同じ方向に動き始めます。その結果として業績が上がり、賃上げの原資が生まれます。これが弊社が提唱する「成長の好循環」です。

「まだうちには早い」は本当でしょうか


「まだうちには早い」「忙しくて制度を運用する時間がない」――こうした声は根強くあります。しかし今回ご紹介した2社の事例を見ると、共通しているのは「会社が変わろうとしているタイミング」に制度を整えたことで、次のステージへ上がれたという点です。

Farrow Partnersは、スタッフが増え始めて組織としての方向性が問われ始めたとき。高崎トーヨー住器は、事業承継を経て2代目が自分の経営を確立しようとしていたとき。どちらも「変わり目」に制度を入れたことで、属人的な経営から組織経営へと脱皮することができました。

Farrow Partnersの福岡氏はこう語ります。「経営理念・経営計画・人事評価制度を一気通貫で形にできたことで、スタッフに成長のキャリアパスを見せてあげられるようになりました。定着率や採用面でも有利に働くと感じています」

高崎トーヨー住器の富沢氏は「以前は何をやっても続かなかった。それが、会社として一つのことを継続してやり遂げられるようになりました。個人商店みたいな状態から、組織として動けるようになったことが一番の変化です」と振り返ります。

事業承継、組織拡大、採用強化……会社には必ず転換期が訪れます。そのタイミングで仕組みを整えられるかどうかが、その後の成長を大きく左右します。まだうちには早いと思っている中小企業さんにこそ、ぜひ知っていただきたい仕組みです

賃上げの問題は、給与水準だけの話ではありません。その根っこにあるのは、組織が持続的に成長し続けられる土台があるかどうか、ということです。弊社のビジョン実現型人事評価制度®は、まさにその土台をつくるための仕組みなのです。

「賃上げできる会社」は、最初から原資があったわけではありません。原資を生み出す仕組みを先に整えたのです。

ビジョン実現型人事評価制度®に関するご相談・資料請求は、お気軽にお問い合わせください。 

こちらからお問い合わせいただけます。
人事評価制度・経営計画の設計と運用のコンサルティング | 日本人事経営研究室株式会社

この記事を監修した人

代表取締役山元 浩二

経営計画と人事評価制度を連動させた組織成長の仕組みづくりコンサルタント。
10年間を費やし、1,000社以上の経営計画と人事制度を研究。双方を連動させた「ビジョン実現型人事評価制度®」を480社超の運用を通じて開発、オンリーワンのコンサルティングスタイルを確立した。
中小企業の現場を知り尽くしたコンサルティングを展開、 “94.1%”という高い社員納得度を獲得するともにマネジメント層を強化し、多くの支援先の生産性を高め、成長し続ける組織へと導く。その圧倒的な運用実績を頼りに全国の経営者からオファーが殺到している。
自社組織も経営計画にそった成長戦略を描き果敢に挑戦、創業以来19期連続増収を続け、業界の注目を集めている。
著書に『小さな会社は経営計画で人を育てなさい!』(あさ出版)、『小さな会社の人を育てる賃金制度のつくり方』(日本実業出版社)などがある。2020年2月14日に15刷のロングセラーを記録した著書の改訂版である『【改訂新版】3ステップでできる!小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方』(あさ出版)を出版。累計20万部を突破し、多くの経営者から注目を集めている。
1966年、福岡県飯塚市生まれ。

個人ブログ:https://jinjiseido.co.jp/blog/

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