人事評価制度の作り方を10ステップで解説、評価制度運用の成功事例も紹介(評価シートのサンプル・テンプレート配布)

人事評価制度に役立つ各種テンプレート無料プレゼント

以下のフォームにご入力いただくと、ダウンロード用URLを記載したメールをお送りします。また、会社のビジョンを実現するための具体的実践例と成功のコツが満載の「山元浩二のメールマガジン」を月2回お届けします!

  • 1
  • 2
  • 3
【必須】
【必須】
メールアドレス【必須】
会社名【必須】
役職【必須】
業種【任意】

人事評価制度は、給与査定のためだけのものではないことをご存じでしょうか。人材を育成するためのものであり、また会社の経営計画を達成させるためのものでもあります。つまり経営計画と連動させて運用することで、初めて人事評価制度は本来の効果を発揮できるのです。

人材と会社をグングン成長させる人事評価制度を作成するには、準備が必要となります。この記事では詳細な作成方法とともに、実際に10のステップにのっとって人事評価制度を作成・運用している会社の成功事例をご紹介します。ぜひ、参考にしてください。

上記のフォームから、評価基準シート(プロセス項目)や評価シートのサンプルのほか、各種テンプレートを無料でダウンロードできますので、ぜひ活用ください。

人事評価制度の本来の役割とは?

人事評価制度の本来の役割は、会社が望む方向に社員を成長させ、強い組織作りを実現することです。大半の人は「人事評価制度」と聞くと「会社が社員の給与や賞与を決める仕組み」「社員の仕事ぶりを評価する仕組み」「信賞必罰を明確にするための仕組み」というイメージを抱く人が多いでしょう。ピンと来る人は、少ないかもしれません。

あるいは、「人材育成なら社員研修が手っ取り早いのでは?」と考える人もいるでしょう。しかし、人材育成を研修から始めるのは間違いです。なぜなら、外部から取り入れる社員研修の内容が、本来会社が求めるべきものとマッチしないことが多いためです。

ときには、社員研修を受けた幹部が「自分の夢の実現のために」と、より報酬のよい会社に転職したり、独立したりといったことが起こってしまうかもしれません。そうなれば、社員研修はプラスどころか、大きなマイナス効果を生むことになってしまいます。

なぜ、人事評価制度が強い組織作りのために大事なのか。どうすれば、人事評価制度で会社が望む方向に社員を成長させることができるのか。具体的な制度設計について解説しながら、紐解いていきます。

動画でも人事評価制度の作成・運用のポイントをお伝えしています。こちらの動画もあわせてご覧いただくと、より理解が深まる内容となっています。

経営計画と人事評価制度で人材を育成する

人と会社を爆発的に成長させる人事評価制度の作成において最重要となるポイントは、経営計画と連動させて運用することです。経営計画と人事評価制度を連動させたこの仕組みを、私は「ビジョン実現型人事評価制度®」と名付け、書籍で紹介し、またクライアントとともにその会社オリジナルの人事評価制度を作り上げてきました。「ビジョン実現型人事評価制度®」を、この記事においてはシンプルに「人事評価制度」と呼称して解説していきます。

人材を成長させる人事評価制度をつくるために、まず社長が取り組むべきことは、経営計画の作成です。経営計画で自社の経営に対する考え方や将来のあるべき姿、そこへ到達するための道筋を明確にし、全社員と共有します。

そして、経営計画に沿って社員一人ひとりの役割を落とし込んだ評価基準に則って評価を行い、課題を確認しながらPDCAを回していきます。こうすることで、会社が望む方向へ全社員を育成しながら導いていくことができます。

社長が自ら定めた経営理念や、幹部と一緒に考えた方針に基づいて運用しますから、前述した外部の社員研修のように、方向性を間違うことはありません。また、社長や幹部社員が使う時間的コストを除けば、お金もかかりません。成長を目指す中小企業に、強くおすすめする方法です。

人事評価制度作成の準備

具体的なステップの説明に入る前に、まずは人事評価制度作成の準備として「ビジョン実現シート®」の作成に取りかかりましょう。「ビジョン実現シート®」とは、経営計画書を1枚のシートにまとめたものです。

一般的な経営計画書は少なくても30ページ程度あり、中には50ページ以上にわたって細部まで明記されたものも見かけます。しかし、1枚のシートにまとめた方が、多くのページを割いてつくられたものより圧倒的に実効性が高いのです。

経営計画書について詳しくは、以下の記事に作り方を掲載しています。一目で誰でも会社の未来地図が分かる、利便性の高いものです。まず「ビジョン実現シート®」の作成から取り組み、その後で人事評価制度の作成に進むことをおすすめします。

経営計画書はA4用紙1枚でOK!10のステップに沿った作成方法

人事評価制度の作り方(10ステップ)

いよいよ、経営計画と人事評価制度を連動させた仕組みの作成に取りかかります。1つ1つ、コツコツと取り組んでいけば、きっと人事評価制度が会社にとってかけがえのない宝物になるはずです。

1. 経営計画発表会を行う

まずは、全社員に向けて新しい人事評価制度の意義を発表する場(経営計画発表会)を設けます。経営計画発表会は、プロジェクトの目的や会社の考え方を、全社員に理解・共感してもらうのが目的です。こういった場がなければ、いくら緻密で精度の高い評価基準を作っても、うまくいきません。

経営計画発表会では、「ビジョン実現シート®」を全社員に配布し、社長自らがその内容を説明することで、上層部の熱意を伝えます。みんなで戦略を実行し、目標を達成するために必要不可欠なステップです。経営計画発表会のノウハウについて詳しくは以下の記事をご覧ください。経営計画発表会に使えるスライドと作り方マニュアルを無料で配布しています。

「経営計画発表会」の3つの目的と成功の5つのコツ

2. ジョブ・ヒアリングシートを作成する

ジョブ・ヒアリングシートとは、評価基準作りのための情報を集めるためのものです。社員全員に配布し、「現在の担当業務の内容、比重・課題」と「本来やるべきだが取りかかれていない仕事」を記入してもらいます。

ジョブ・ヒアリングシートには、3つの役割があります。「評価基準作りのもとになる情報を集める」「社員が自分の取り組むべき課題を把握する」「社員自らが新しい制度作りに参加している意識を持ってもらう」の3つです。社員たちが受け身ではなく、自分ごととして制度改革に関わるよう意識づけします。

下記は実際のヒアリングシートのサンプルです。

【ジョブ・ヒアリングシート1】(現状行っている仕事)

仕事区分 仕事項目 仕事内容・手順・仕事を行う上でのポイント 問題点・課題
営業活動 既存客フォロー 過去の購買履歴を参考におすすめを行う(キャンペーンや新商品など) 既存客へのフォローに時間がかかり、新規のリサーチ・営業にかける時間がない
HP問い合わせ対応 要望に対して回答や提案を行う。当日対応を努める 顧客との日程が合わず訪問予定日が延びてしまう
契約 見積もりを提示し必ず書面にて契約を行う 契約内容詳細に関して時間をかけて説明する
営業会議 営業会議参加 毎週月曜日に進捗報告、月に一度月次会議で売上報告 数字報告だけになっているので、細かい活動報告が必要
事務 資料作成 見積書(提案書)の作成 提出が遅れることがある。事務処理に時間がかかる

 

【ジョブ・ヒアリングシート2】(現状はできていないが本当はやりたい、やらなければならないと思っている仕事)

仕事区分 仕事項目 仕事内容・手順・仕事を行う上でのポイント 阻害要因・手がけるために必要なこと
営業活動 営業ツールの整備 アプローチブック、会社の理念、こだわり案内など 誰かがつくってくれるだろうという意識
DM 顧客情報管理ソフトの入力実施、フォロー活動を定期的に行う 入力に時間がかかるため、後回しになりがち
電話フォロー DM郵送後にフォローの電話をかける 期限を決めて全員で取りかかる
HP 事例更新の頻度を増やし、内容 をもっと充実させたい 担当者以外、更新方法を知らない ため、頻度を上げることが難しい
教育 営業活動の指導 部下一人一人の目標と課題を把握して定期的に面談を行いながら指導する 自分のことで精一杯で時間が取れない
その他 環境整備 効率的な営業活動のために毎日必ず実施すること 目的が明確に理解されていないため、きちんと実施されていない

3. 「評価制度づくり」に取りかかる

各社員の現状と課題を把握したところで、いよいよ人事評価制度作りに取りかかります。大事なのは、いかにリーダーを巻き込んでいくかです。「人事評価制度=人材育成の仕組み」であることを理解してもらうため、部下たちを評価するリーダーには別メニューで説明会を設けましょう。

「プロジェクトの成功は、リーダーが部下をうまく育てられるかどうかにかかっている」「人材育成が成功しなければ、会社の未来はない」。このようにリーダーへ期待する思いを社長が自ら語り、奮起できるようメッセージが伝わると理想的です。

4. グレードと仕事レベルを明確にする

まずは、評価基準のフレームをつくっていきましょう。グレードの段階数とレベルを明確にします。例えば会社に新入社員がいたとして、彼らはどのような段階を踏んでいくと、主任・係長・課長とステップアップしていくのでしょうか。つまりグレードの数は、あなたの会社の育成ステップの数です。

グレードの段階数の決め方は、以下の記事に詳説しています。参考にしてください。

給与制度の「等級(グレード)」とは?等級の設計の仕方

5. 評価項目を作成する

作成したグレードに応じて、評価項目を作成していきます。評価基準は、経営計画を全社員に実行してもらいながら理想の人材像に向けて成長してもらうための行動基準です。そのため、経営計画の要素を落とし込んだものとしなければなりません。

項目は、大きく4つの種類に分類されます。「業績項目」「成果項目」「能力項目」「情意項目」の4つです。それぞれの項目の具体的な考え方は以下の記事で詳しく説明していますので、参考にしてください。

評価基準(評価項目)の決め方、行動に結びつける人事評価の4つの項目

6. 「業績項目」で数値目標を明確にする

4つの項目区分がイメージできたら、まずは業績項目を定めます。大事なのは、「業績結果項目」と「業績プロセス項目」を分けて考えることです。

業績結果項目は、営業職でいえば、営業として求められる業績の数値結果です。一方、業績プロセス項目は、営業活動中の数値で測れる行動を指します。どちらも、人材育成にとって外せない項目となります。

これらの項目の考え方の違い、項目の立て方などは、以下の記事も参考にしてください。

業績プロセス項目を盛り込んだ業務評価の方法、職種・部門別の業績評価項目の事例

7. 「成果項目」を定める

成果項目は、数値で表せないものの、業績に直結する重要な役割や仕事を指します。この項目は、2つの視点から考えます。最も重要なのが、経営計画の戦略の実践に結びつく行動を定めるということ。もう一つが、会社の成長にとって重要であるにもかかわらず、なかなか手がつけられていない課題を抽出することです。

例えば「顧客管理の仕組み作り」を徹底するという戦略を経営計画に盛り込んだとしたら、営業職の成果項目に「顧客管理の徹底」という項目を定め、「必要な顧客情報を収集し、ルールに沿って入力、報告するとともに営業活動に活用できていた」と営業マンに求める内容を明記します。

また、「企画提案」はやるべきだと誰もが分かっていても、日々の業務に忙殺され、できていないことが少なくありません。しかしこれを評価基準の項目に盛り込むことで、評価のたびに何件提案できたのか、質はどうだったのかを確認できます。これによって確実に企画提案について考える機会が増え、レベルも上がっていきます。

将来の会社の発展にとって重要度は高いが緊急性の低い課題を、成果項目で求めていきましょう。すると本当に強い組織が実現できます。

8. 「能力項目」を定める

能力項目について重要なポイントは、能力が「ある」だけではダメで、その能力を仕事上で発揮して初めて評価の対象とすることです。例えば、スケジュール管理が「できる」ではなく、「漏れや遅れ、ミスなどがない管理ができた」とします。

また、多岐にわたる技術習得が求められる専門性の高い職種については、必要知識や技術の項目を詳細に定めましょう。そして高い評価ウェイトをこの項目に与え、認めてあげることが重要な場合もあります。必要以上に高評価とならないようバランスを考えながら作成しましょう。

9. 「情意項目」を定める

情意項目は仕事に対する姿勢や考え方を評価するものですから、自社の社員としての資格を問う部分でもあります。全社員が真っ先にクリアしなければならない、重要度が高い項目です。

ただ、考え方を評価するとはいえ、実際は仕事の中での行動レベルに落とし込んで評価するのが重要です。ここで解説すると長くなるので、詳細は以下の記事を参考にしてください。

「情意考課(情意評価)」は経営理念の実現に不可欠、人事評価に取り入れる際の5つのポイントとは

10. 項目ごとの重みづけを「ウェイト配分表」に反映する

評価基準が完成したら、次は項目ごとに点数配分を決めます。基本的に、業績項目のウェイトは下位グレードが小さく、上位グレードになるほど大きくします。なぜなら上位グレードの方が数値責任を求められるからです。管理職から半分のウェイトとするのが一般的です。

一方で、「能力項目」と「情意項目」のウェイトは、上位グレードが小さく、下位グレードになるほど大きくします。これは、下位グレードの社員に重要な仕事に対する考え方や姿勢を身につけてもらいたい、勉強に励んでもらって能力を身につけてもらいたいからです。

また、グレードだけでなく、部署や職種によってウェイト配分を変えるのも重要です。営業的な性格が強い部署は業務項目のウェイトを大きく、事務的な性格が強い部署は業績項目を小さくします。その上で、会社が戦略的に重視する項目に大きくウェイトを振るといいでしょう。

人事評価制度のウェイト配分表の例

人事評価制度は作成後の運用が重要

ここまでの作業で評価基準作りは終了です。ここで明確な基準ができれば、次は運用です。作成して終了してしまっては、絵に描いた餅になります。運用できて初めて人事評価制度は意味をなしますので、「作成してからが本番」と肝に銘じましょう。

具体的には、企業戦略を推進し成果を出すためのアクションプランを設定し、人事評価制度と連動してPDCAを回していきます。これによってビジョン実現シート®に描いた会社の未来絵図が、現実のものに近づいていきます。

アクションプランの詳細については、以下の記事を参考にしてください。

アクションプランのPDCA、リーダーを成長させる運用サイクル

運用後も適正な評価を実施・継続するための仕組みをつくる

適正な評価を行い、社員の納得度を高めて行くには、作成した評価制度だけでは不十分な場合があります。運用ルールを作らないことには、制度がうまく回っていかないためです。せっかく作った人事評価制度を無駄にしないために、次の3つの仕組みで着実に運用していきましょう。

マニュアルやルールで制度運用方法を見える化する

例えば、「顧客管理ルール通りに、お客様の情報管理と活用が行えていたか」という評価項目があったとします。ところが、いざ評価を行ってみると、「顧客管理ルールってどんなルール?」という問題が出てくることがあります。「自ら考えた企画や改善提案を、提案制度に基づいて提案した」という評価項目に対して、「うちに提案制度なんてありますか?」と言い出す社員が出てくることも。

適正な評価のためには、評価制度を支援するためのルールをあらかじめ作っておかなければなりません。運用前に整備するのが理想ですが、気づけなかった場合はすぐに用意しましょう。例えば、以下のようなマニュアルやルールが挙げられます。

  • 部門・部署方針、実行計画
  • 顧客管理シート
  • 受発注マニュアル
  • 日報
  • 清掃マニュアル
  • 身だしなみマニュアル
  • 現場プレゼンルール
    (建設業の現場などで会社のシートや営業ツールなどをどのように設置するか明確にしたルール)

ルールを定めれば、評価視点を統一することが可能になります。

活性化のための工夫をする

マンネリを防いだり、常に新鮮かつ前向きに仕事へ取り組んでもらったりするための企画が必要な場合もあります。実例を挙げて解説しましょう。

複数店舗の居酒屋を運営している会社では、人事制度を導入後2年が経ち、制度の運用に何となくマンネリ感が漂っていました。社員の中からは、何のために評価をやっているのかという声も聞こえてきていました。

そこで私と社内の核となるメンバーが一緒になって考えをめぐらせ、「商品企画コンテスト」を企画しました。商品企画であればアルバイトも含めてスタッフ全員が考えられ、上下の関係なく優勝するチャンスもあります。

提案するためのシートやルール、選出方法などを決めて全社員の前で発表すると、毎日のように各店舗から新メニューの提案が届きはじめました。ときにはプロジェクトメンバーが丸一日、集約に追われる日もありました。

第1回目の優勝者はアルバイトから出て、アイデアは全店舗で商品化されることに。優勝者は自分が創作した料理がメニューに並ぶとともに、売り上げに応じてインセンティブが支払われるため、大盛り上がりのコンテストになりました。

この事例のように、できた人事評価制度をただ運用するだけでは、なかなかうまくいかないことがあります。制度を補完、支援する小さな仕組みを追加していくことも、継続的に取り組んでもらうためには必要なのです。

「納得度アンケート」で導入効果を定期的に計測

社員のモチベーション、納得感を継続的に計測していくために、私は「納得度アンケート」をとることをお勧めしています。いわば人事評価制度導入に関する社員の意識調査です。

評価の実施、および育成面談の終了後にこのアンケートを行います。制度の充実度、社員の満足度を計測し、制度の改善につなげていくのです。

この「納得度アンケート」には、もう一つ重要な役割があります。それは指導者として不適格なリーダーを見抜くことです。納得度の低い部署のリーダーには、何らかの問題があるためです。アンケートには部署とグレードだけを記入し、無記名で提出してもらうことで、スタッフの本音を引き出せます。

納得度アンケートについては、以下の記事に詳しく解説しています。作成方法を詳細にまとめてあるので、ぜひ参考にしてください。

評価シートの記入例

ここで上司評価(営業部署)による評価シートの記入例をご紹介します。評価はA、B、C(Aが最も良い)で行います。

評価シート記入事例・課長の場合

評価項目 判断理由・根拠 評価
成果目標 経営理念の理解 ①経営理念、基本方針、行動理念はすベて暗唱できる状能だった。 A
②基本方針や行動理念は意識して行動できていた。 B
戦略・アクションプランの推進 ①アクションプランはすベて理解し、営業のなかでも中心メンバーとして先頭に立って推進役を買って出ていた。 A
②アクションプランの顧客アンケートに関する項目案を提案するなど、積極的にアクションプランに関わっていた。その項目から貴重な顧客情報を数多く得ることができた。 A
商談推進 ① 必要事項のヒアリングまでは行えていたが、顧客本質を把握するところまではできていなかった。 C
②商談の手順は、相手に合わせて自分なりに工夫してのぞみ、クロージングはタイミングよく行えていたと思う。 B
顧客情報の活用 ①顧客の趣味に応じた話題づくりやプレゼントを自分なりに工夫して実践し、成果に結びつけていた。 A
②部下の顧客管理状況も気にかけてくれている。 B
お客様対応 ①部下のクレームも把握しており、通切な指導と支援を行なっていた。 A
②クレームの集約や分析は行なっていなかった。 C
能力目標 業務改善力 ①顧客管理システムの改善を提案し、自らシステム担当者との打ち合わせに入り、改善・効率化が実現できた。 A
報告・連絡・相談 ①相手の状況にも配慮しながら、自身の意見や提案を添えた、的確な報告・連絡・相談を行なえていた。 A
②部下からの相談・報告も受けながら適切なアドバィスができていた。 A
部下の育成指導
(人材育成力)
①部下とのコミュニケーションはよく取っており、相談にも乗っているようだ。 A
②部下の目標の達成状況を気にしながら、アドバイスも行っていた。 B
情意目標 責任感 ①目標に対する執着心が強く、最 後まで決してあきらめずにトライする姿勢は、営業社員の手本となるものであった。 A
協調性 ①コミュニケーションはみんなと積極的にとっているが 、一部、 苦手意識のある社員もいるようだ。 B
変革意識 ①業務が忙しくなってくると余裕がなくなるようで、新しい取り組みなどには消極的な発信もあった。 B

評価シート記入事例・部長の場合

評価項目 判断理由・根拠 評価
成果目標 経営理念の理解 ①経営理念などが暗証できているかどうかは未確認。
②基本方針や行動理全を意識して行動していたようには思えない。 C
戦略・アクションプランの推進 ①営業戦略について聞いたとき、重点商品の考え方をかんちがいしていたことがあった。 C
②関連するアクションプランに関しては、積極的に推進・提案も行っていた。 B
商談推進 ① 顧客によって苦手意識があるのか、コミュニケーションがスムーズにとれていない。 C
②同行した際、資料の準備不足があり、顧客に商品の魅力を十分伝えきれないことがあった。 C
顧客情報の活用 ①顧客情報は自分なりに考え、活用できているようだ。 B
②部下へもよくアドバイスを行なっているようだ B
お客様対応 ①◯◯社のクレームのときは、報告が遅れたため私が出ていき対応、対処を指示することとなった。 C
②クレーム処理が終わったら安心して、その後の防止策までは考えられていなかった。 C
能力目標 業務改善力 ①業務の改善意識はあるようで、ときどき提案をしていた。 B
報告・連絡・相談 ①クレーム報告が遅れたため、できているとは判断できない。 C
②自分ができていないので、部下に指導できるレベルではない。 C
部下の育成指導
(人材育成力)
①部下へはよく話しかけている。部下からも頼りにしているという声を聞く。 B
②部下の行動プロセスはよく把握して、細かい指示をしている。 B
情意目標 責任感 ①目標に対しては最後まであきらめない気持ちをもって行動できていた。 B
協調性 ①自分からコミュニケーションをとろうとしていた。 B
変革意識 ①部門全体で取り組む新しい企画に対して、営業社員のなかでは取り組みが遅く、消極的であると言わざるを得ない。 C

 

人事評価制度の運用を阻害する3つの原因

人事評価制度の運用には、ありがちな落とし穴があります。起こりがちなトラブルを知って先手を打てるよう、以下の3つの阻害要因を押さえておきましょう。

忙しすぎて評価できない

私がクライアント業を始めたころ、人事評価制度を作成するところまでお手伝いし、運用まではタッチしていませんでした。しかし、かつて支援を行ったクライアントに連絡してみると、せっかく人事評価制度を作ったにもかかわらず「忙しすぎて運用できていない」と打ち明けられることが続きました。そこで私は運用が安定するまで併走することを決意し、今に至っています。

なぜこのようなことが起こってしまうのでしょうか。2つの理由があります。1つは評価の重要性を理解していないこと、もうひとつは、これまでに評価の経験がないことです。

評価者となるリーダーたちが評価の重要性と会社の中での位置づけを本当の意味で理解できていないと、忙しいときは評価以外の業務を優先させてしまいます。人事評価制度がうまく運用できて初めて会社と人材の成長があること、理念や目標の達成が叶うことを、リーダーに徹底的に教え込む必要があります。

また、30人未満の中小企業の社員は、評価の経験値がゼロに等しい人がほとんどです。例えば中途で同業種の経験がある社員を採用したとします。いくら経験者といっても全く仕事を教えることなく成果を上げてもらうのは無理でしょう。ひと通りのことを教え、しばらくチェックしながら指導するはずです。

ところが、人事評価制度については、制度ができたら一度説明会をし、簡単な手順書を渡すだけで「後はやれるだろう」とリーダー任せにしてしまう傾向にあります。しかし、リーダー本人は初めて経験することばかりです。細かく指導してもらったわけではないので、当然、最初から満足のいく形で評価できるわけはないのです。

評価のバラツキが修正できない

評価を実施すると最初は必ず起こることですが、評価者ごとの判断基準はバラバラになります。当然、評価結果はとても公平とはいえない状態です。

これを「制度の設計ミスだ」「評価項目の選定の仕方が悪かった」など、制度のせいにする方が多くいらっしゃいます。こういう方は、あたかもシステマチックかつ自動的に行えば、公平かつ正当な評価結果が導き出せると信じているかのようです。

しかし、そのような仕組みはこの世の中に存在しません。このバラツキをなくし、公平かつ納得のいく評価を実施するためには、評価者による会議を繰り返し実施するしかありません。

時間がかかり、面倒なプロセスでもありますが、人材の育成のために必要なプロセスと考えればその重要性も納得できるでしょう。このプロセスに時間と労力をかけることによって、リーダーが育っていくというメリットもあります。

賃金が下がってしまうから運用できない

評価基準は、将来の理想の社員像を実現するための育成基準です。これまで求めていなかった内容や、明らかに現状よりレベルの高い内容も盛りこまれています。そのようなレベルの基準で評価していった場合、ほとんどの社員の評価結果が低いものになってしまう場合があります。

昇給や賞与に反映しようとしたところ、金額が下がってしまう人が続出。一方、現状行っている仕事のレベルが落ちたわけではない。これでは社員のモチベーションが大きく低下してしまい、賃金に反映させられない、だから運用できないというケースです。

このような場合は、運用のルールを柔軟に対応させていきましょう。例えば、評価の点数判断基準をゆるやかに調整するなどの工夫をして対処します。一度決めたルールだからと硬直的に考えるのではなく、うまくいかない場合は変更すれば良いのです。

人事評価制度の導入・運用の成功事例

ここで、私のクライアントの事例から、「ビジョン実現型人事評価制度®」の導入や運用についてご紹介します。業種はさまざまですが、人事評価制度への取り組みが、企業を成長させる大きな力となっていることがみてとれます。

株式会社2りんかんイエローハット様

オートバイ用品の専用チェーンを全国展開している2りんかんイエローハット様(以下2りんかん様)は、社員数350人以上の大所帯です。「ビジョン実現型人事評価制度®」への取り組みは、5年となります(取材当時)。

代表の石渡社長が前任者の仕事を引き継いだのは、2009年のこと。当時の評価制度は成果主義に重きを置き、査定は1年に1度だけでした。「課題はハッキリ見えているのに、評価はその課題とリンクしていない」と感じた石渡社長は、山元の著書『小さな会社は人事制度で人を育てなさい!』を読み、「私の求めていた人事評価制度が、ここに書かれている」と実感したそうです。

とくに共感した仕組みは、「会社と社員の5年後の姿を明確にし、やるべきことを具体化し、社員の成長や成果を一目で見渡せる制度を作る」というものでした。早速、中期経営計画を刷新し、評価制度の再構築に取りかかった石渡社長は、2013年2月に「人財成長プロジェクト」をスタート。「お店の存在意義は、オートバイに乗る人の駆け込み寺になることである」と定義しました。

さらに「業界貢献度ナンバーワン」「社員が幸せを実感できる会社」という目標を掲げ、経営計画書へと落とし込んで幹部や店長らと中期経営計画・人事評価制度の方向性を共有。2回のトライアル評価を経て、2014年10月には新制度の評価実施を開始しました。2016年には、新賃金制度も確立させ、運用しています。

制度運用に当たってとくに意識しているのは、350人の大所帯に人事評価制度の真の目的を浸透させることです。そのためには各店舗の店長がしっかり制度目的を理解し、高い意識を持つことが重要です。また、全スタッフへの目的浸透のため、半年に1度の評価だけでなく、毎月面談を行っています。

店長教育と面談の実施によって顕著になったのが、リーダーシップを発揮できる存在の出現です。現在では管理部と店長の選抜メンバーで評価制度の改善・浸透プロジェクトを自主的に立ち上げ、定期的にミーティングを行うなどして、現状の仕組みをブラッシュアップしています。

株式会社2りんかんイエローハット様のインタビュー全文はこちらからお読みいただけます。
株式会社2りんかんイエローハット様のインタビュー詳細

株式会社中央歯科補綴研究所様

中央歯科補綴研究所様は歯科医師と連携し、入れ歯や差し歯の制作・修理を行う歯科技工所を展開されています。技術者が大半を占める会社で、リーダーを育てる人事評価制度を開発・運用するのは大変なものです。しかし中央歯科補綴研究所様では、2012年の「ビジョン実現型人事評価制度®」制度導入以来、5年で売上2倍、離職率の大幅改善、リーダー育成、新卒採用といった多くの目標をクリアしています。

中央歯科補綴研究所様は2005年から経営理念を軸とした組織経営を目指す取り組みを始めていましたが、なかなか社員のベクトルが揃わず離職率の増加や人手不足に悩んでいました。あるとき、山元の著書『小さな会社は人事評価制度で人を育てなさい!』を手に取り、経営計画書と一体となった人事評価制度の実施によって人材育成が叶い、人材育成を通して経営目標が達成できる仕組みに共感。面談後、即コンサルティングの契約を結びます。

激務のなか、社内に一時的な混乱を伴うであろう抜本的な改革を行うことに不安はありました。しかし「何か起きても、全て好転反応」と覚悟し、「日本一社員満足度の高い歯科技工所を作る」というビジョンのもと、2013年1月に全社員にむけて評価制度の導入を説明会する「キックオフ発表会」を開催。その後、幹部社員と評価制度の仕組み作りをすすめ、全スタッフに「評価制度説明会」を行うなど、全社員を巻き込む大きなイベントとなりました。

プロジェクト推進の中で、2016年5月には最新の設備環境を整えた新社屋に移転することも叶い、これが働きやすい環境の実現につながっています。そして、リーダーたちの働き方が明らかに変わってきました。キラキラ輝き、驚くほど大きく成長したのです。さらに、彼らの次を担う社員が、どんどん育ってきています。

株式会社中央歯科補綴研究所様のインタビュー全文はこちらでお読みいただけます。
株式会社中央歯科補綴研究所様のインタビュー詳細

株式会社山六木材様

新潟県中越地域で住宅・リフォーム・不動産を中心に事業展開しているのが、山六木材様です。社員が7~8人ほどの頃までは、面白いくらいスムーズに展開が叶い、社員のベクトルも揃っていたとのこと。しかし会社が成長し、社員が10人以上になったあたりから「会社の方向性が分からない」という社員が増え、離職率も高くなっていました。

ついに2015年4月、15名いた社員のうち5人が退社する事態となり、小林社長はマネジメントの設計図を持とうと、人事評価システムの導入を始めました。さまざまな経営サポートを経て、「評価制度の設計だけでなく長期的にサポートしてくれる山元さんのところがよい」と、「ビジョン実現型人事評価制度®」の導入に踏み出したそうです。

同年6月から制度設計を開始。小林代表はマネジメントが苦手ということでしたが、一つ一つ階段を上るように評価制度の仕組み作りをサポートし、ついに本格的な運用をスタートしました。やるべきことはたくさんありますが、マネジメントが見える化できており、行く先が明確になっているので不安はないそうです。会社の体質が劇的に改善されてきた効果も実感されています。5人の社員が辞めてから6人を採用しましたが、辞めた社員は1人だけ。しかも円満退社です。

トライアル評価を進める中で、顕著になったことがあります。それは、リーダー育成について。4名の評価者のうち、「評価の記入→育成会議→育成面談→チャレンジシートの更新・チェック」のプロセスをきちんと実践できていたのは、1名の女性評価者のみでした。この評価者の部署は、PDCAサイクルを上手に回すことで、ほかの部署より効率的に部下を育成しています。ほかの評価者も同じように実践できるよう、この女性評価者をマネージャーとし、仕組みの推進役を任せています。

株式会社山六木材様のインタビュー全文はこちらでお読みいただけます。
株式会社山六木材様のインタビュー詳細

株式会社アクト様

アクト様は、電動工具の国内在庫量、最大級のリサイクルショップを複数店舗展開している、埼玉県の企業です。2011年、「ビジョン実現型人事評価制度®」を導入し始めた頃は埼玉県に4店舗を構えていましたが、2013年には5店舗目として、東京都への出店を実現しています。

2代目となる伊藤現社長は、マネージャーを務めていた2011年当時、スタッフのレベルアップが実現しない原因を探ったところ、「スタッフが仕事にやりがいを感じていない」という課題を突き止めました。しかし、原因がわかっても、有効な手立てが見つからず、ただただ焦りがつのるばかり…

伊藤社長は書籍やセミナーなどで情報収集を行い、自分なりに経営理念やビジョンの作成や社内発表会を行うもスタッフに浸透せず、思うように実践できずにいました。そんな中で出会ったのが、山元の著書『小さな会社は人事評価制度で人を育てなさい!』でした。「ビジョン実現型人事評価制度®」を知り、私とコンサルティングの契約をしたうえで、経営計画書を改めて練り直すことから始めました。5カ年計画や戦略を具体的に示し、評価基準も明確にした上で、会社の理念や方針につながる行動基準を作り上げていきます

2012年に評価制度の発表会を開いたときには、店長からの反発が大きく、「ただでさえ忙しいのに、これ以上業務を押しつけるのか」といった声が聞かれました。しかし、伊藤社長は社員全員の面談に同席し、一人ひとりに「この改革はみんなの幸せの実現のため」「これからのアクトにとって、なくてはならないもの」であると丁寧に説明したといいます。

伊藤社長の熱意はしっかり伝わり、店長やスタッフも、回を重ねるごとに前向きに取り組むようになってきました。伊藤社長は「コミュニケーションの改善こそが、業績回復の一番の要因」と語ります。丁寧な面談により意思疎通が図れたことが、スタッフのモチベーション向上につながったのです。

スタッフのやる気が向上してから、アクト様の業績はみるみる上向き始めました。売上は、毎年120%前後の成長を実現。店舗展開と資金繰りにも余裕が生まれ、運用初年度の決算から2000万円近くの手元余裕資金が確保できるようになりました。税金を支払ったらわずかな現金しか残らなかった状態から、経営が大幅に改善されたとのことです。

株式会社アクト様のインタビュー全文はこちらでお読みいただけます。
株式会社アクト様のインタビュー詳細

人事評価制度の策定に役立つシートを無料でプレゼント中

【無料】シート集をダウンロードする

おわりに

会社と人材をグングン成長させる人事評価制度は、一朝一夕ではできません。しかし、社長や経営幹部、リーダーたちが一丸となって評価制度作りに取り組むからこそ、唯一無二の制度設計が可能になります。それは、必ずや会社の大きな屋台骨となることでしょう。

「なかなかリーダーが育ってくれない」「このままでは会社の成長が見込めない」とお悩みであれば、ぜひまずは人事評価制度の改革から始めてみてください。最初の一歩として「ビジョン実現シート®」を作成すれば、理想の会社、理想の人材像がハッキリ見えてくるはずです。

人事評価制度改革を完遂させるためには、企画以上に細やかで継続的な運用が欠かせません。ゼロベースから人事評価制度を策定し直し、導入していくための手法を学びたい方には、日本人事経営研究室代表 山元浩二の著書「改訂新版 小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方」がおすすめです。長年の経験を元に、人事評価制度改革を成功させるための、具体的かつ実際的な内容となっています。

書籍・改訂新版 小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方

人事評価制度の構築・導入については、以下の記事もぜひご参照ください。

この記事を監修した人

代表取締役山元 浩二

経営計画と人事評価制度を連動させた組織成長の仕組みづくりコンサルタント。
10年間を費やし、1,000社以上の経営計画と人事制度を研究。双方を連動させた「ビジョン実現型人事評価制度®」を480社超の運用を通じて開発、オンリーワンのコンサルティングスタイルを確立した。
中小企業の現場を知り尽くしたコンサルティングを展開、 “94.1%”という高い社員納得度を獲得するともにマネジメント層を強化し、多くの支援先の生産性を高め、成長し続ける組織へと導く。その圧倒的な運用実績を頼りに全国の経営者からオファーが殺到している。
自社組織も経営計画にそった成長戦略を描き果敢に挑戦、創業以来19期連続増収を続け、業界の注目を集めている。
著書に『小さな会社は経営計画で人を育てなさい!』(あさ出版)、『小さな会社の人を育てる賃金制度のつくり方』(日本実業出版社)などがある。2020年2月14日に15刷のロングセラーを記録した著書の改訂版である『【改訂新版】3ステップでできる!小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方』(あさ出版)を出版。累計14万部を突破し、多くの経営者から注目を集めている。
1966年、福岡県飯塚市生まれ。

個人ブログ:https://jinjiseido.co.jp/blog/

日本人事経営研究室は仕事創造型人材を育て、成長し続ける強い企業づくりをサポートします

私たち日本人事経営研究室は、"人間成長支援"をミッションとし、
中小企業の持続的成長をサポートしています。
「人材」ではなく「人間」としているのには、こだわりがあります。
それは、会社の中で仕事ができる「人材」ではなく、仕事を通じて地域や環境、社会に貢献できる「人間」を育てる事を目指しているからです。
日本人事経営研究室では、そのために必要な「人」に関するサービスや情報を提供しています。

日本人事経営研究室 代表取締役 山元浩二氏

無料人事評価制度策定に役立つ
テンプレートをダウンロードする

関連記事