「人事評価制度」に「戦略」が必要である理由と組織の成長に果たす役割

「人事評価制度」に「戦略」が必要である理由と組織の成長に果たす役割

新著の『小さな会社の〈人を育てて組織の生産性を高める〉戦略のつくり方』は、「戦略」をテーマにした書籍です。そこで、本メルマガでも「戦略」についてお伝えしていきます。

なぜ今回、戦略に関する書籍を出版するのか?!それは、戦略が生産性に大きく影響するにもかかわらず、きちんと推進できている中小企業は少ないからです。

いわば、中小企業と大企業との生産性の差につながっている大きな要因です。その差は大きく、中小企業の生産性、社員一人当たり粗利益(付加価値)は大企業の半分未満です。ここに手をつけなければ日本の中小企業の将来は暗い、と私は確信しているのです。

そこで、一人でも多くの中小企業の社長に、本書を通じて戦略の重要性に気づいてもらい、組織の成長と生産性向上に取り組んでいただきたいのです。もちろん、戦略をつくるだけではなく「ビジョン実現型人事評価制度®」の仕組みの中でです。

なぜ「人事評価制度」に「戦略」が必要なのか?

「ビジョン実現型人事評価制度®」は組織を成長させる仕組みで、本来「戦略」が盛り込まれています。書籍などをもとに実践に向けて動いていただいている方は理解していただいてるでしょう。

では、なぜ「人事評価制度」に「戦略」が必要なのでしょうか?その理由をお話ししましょう。

結論から申し上げると、人事評価制度だけ運用できても業績向上にはつながらないからです。私はこのことにコンサルタントを4、5年経験して気づきました。

経営計画や戦略を明確にせずに人事評価制度をつくると、現状、社員にやってほしい仕事を求めるレベルで「評価基準」ができてしまいます。こうして完成した評価基準には、将来のビジョンや理念を実現するために必要な要素は盛り込まれません。

その結果、社員の成長や業績に結びついたとしても一時的なものに終わってしまいます。このため、まず「10カ年事業計画」で将来の数値目標を明確にし、会社がどこを目指すのかを決めます。

しかし、数値だけ掲げてもそのプロセスで何を行うべきかが決まっていないと、社員の役割に落とすことはできません。そこで、数値目標達成のための「戦略」を明確にし、そのための社員の役割を「評価基準」に落とし込んで実行してもらうのです。

これが、人事評価制度に「戦略」が必要な理由です。

「戦略」が組織の成長に果たす役割

では、「戦略」が組織の成長においてどんな役割を果たすのか?

「戦略」の目的は“目標の達成”です。

「ビジョン実現型人事評価制度®」で定める目標は「10カ年事業計画」ですので、事業計画達成のために戦略を作成し、経営計画に盛り込み明示します。「ビジョン実現型人事評価制度®」は、これを「評価基準」に落とし込む構造になっています。

「評価基準」は、社員全員の行動基準です。このため、「戦略」があってはじめて業績目標を達成するにはどう行動したらよいかを現場の社員に示すことができます。「戦略」がない場合、目標達成に向けた行動は本人任せ、あるいはリーダー次第となってしまいます。

すなわち「戦略」は、会社のビジョン・目標と現場の行動をつなげる重要な役割があるのです。個人的には、こんなに大事な「戦略」を明文化せずによく組織の経営ができるなと不思議に思います。これが中小企業の生産性=粗利益/社員1人当たりが伸びない大きな要因です。

私は一人で創業した時から自分自身の行動を律するために戦略をつくりました。その結果、23年連続増収を実現しています。

「アクションプラン」の運用が戦略PDCAをまわせるリーダーを育てる

戦略に欠かせないアクションプランのお話もしておきましょう。

ドラッカーさんもこうおっしゃっています。

アクションプランなくしては戦略も成り行き任せになる

しかし、戦略を作成した後の中小企業は、まさにこの状態です。

「ビジョン実現型人事評価制度®」には、組織を経営計画の実現に向けて成長さるために「アクションプラン」と「評価制度」という2つの運用の仕組みがあります。このうち、「アクションプラン」の仕組みで戦略を推進していきます。

アクションプランは、毎月「アクションプラン会議」という会議の場で行います。アクションプラン会議では、社長はもちろん各部門のリーダーたちも参加して会社全体の戦略のPDCAに関わっていきます。

おそらく、みなさんの会社でも“戦略PDCAをまわしながら成果を出している”というリーダーは少ないと思います。「アクションプラン」の運用はこうしたリーダーを育てることができます

その結果、“全リーダーが主体的に戦略PDCAをまわしている”状態となり、組織が成長し続けることができるのです。

「評価制度」と「戦略」が結びついていないとどうなってしまうのか?

「ビジョン実現型人事評価制度®」には、「アクションプラン」と「評価制度」という経営計画達成に必要な2つの仕組みがあることをお伝えしました。

「ビジョン実現型人事評価制度®」では評価制度に戦略を落とし込むのですが、まず評価制度と戦略が結びついていないとどうなってしまうのかをお伝えしておきましょう。

わかりやすく、結論から申し上げると、“社員の評価がよくなっても業績は上がらない”という結果を招いてしまいます。

その結果、人件費だけが上がってしまって利益を圧迫してしまうという人事評価制度で目指すべき方向性とは逆の状態となってしまいます。

なぜこういったことが起こってしまうのか?!

先述したように、経営計画をつくらずに評価制度を作成してしまうと、「評価基準」が“現状求める仕事レベル”でできてしまいます。ところが、“今”考えられるベストな状態を目指しても近い将来、限界が来るのです。

一方、「経営計画」には5年、10年先のビジョンを実現するために必要な新たな目標やスキルが盛り込まれています。これらの要素を「評価基準」に落とし込むことで会社のビジョン実現に必要な理想の人材を育て、生産性を上げ続けることができる組織を確立できるのです。

これはまさに、賃上げの前に進めるべき取り組みなのです。