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過去の講座では人事評価制度の設計手法についてお話してきましたが、今回は人事評価制度をどうやったら具体的に社員の育成や業績に結び付けていくかをお伝えしていきます。
人事評価制度は「設計」と「運用」ではどちらが重要だと思いますか?実は『設計:運用』を割合で表すと『2:8』となります。そう、人事評価制度は運用のほうが重要なのです。
さて、「社員育成や業績に結びつける」といってもそれが導入してすぐに効果として現れるわけではありません。その前に運用時にまずクリアにしておかなければならないことは評価項目の公平性です。一定水準以上の公平性が保たれていないと逆に社員のモチベーションの低下を招きかねないからです。
例えば営業職の業績評価項目として
という4項目で評価を行うとします。
しかし、このような結果数値だけで評価しようとすると「不公平だ!」という社員がどうしても出てきてしまいます。
彼らはこう言います。
「エリア換えをされもともと業績が悪いエリアを持たされた」
「自分のエリアに競合他社の営業所ができて不利だ」
「オレは既存顧客が多いので新規訪問の余裕がない」
等々、彼らは目標を達成できなかったときの正当性を一生懸命主張します。
このような時は次の3つの方法を使って評価に公平性を持たせてください。
まず、(1)についてですが、上記のような事情を加味した上で個々の営業パーソンごとに別々の目標数値にします。その目標に対しての達成率で評価を行っていくのです。こうしてより個々人の事情を考えた評価方法とし納得感を持たせていきます。
次に(2)についてです。先ほど『結果数値』と書きましたが、(1)~(4)はいずれも業績の【結果】を評価していく項目です。これに対して『プロセス数値』を評価項目として加えていくのです。
『プロセス数値』は、
等の『結果数値』が上がるまでの【プロセス】段階を評価項目としていくのです。こうすることによって結果をすぐに出すのが不利なエリアを担当した人でも行動で評価を高めていくことができます。
ちょうど、昨日も(2)についてあるお客様のところで検討をしていたのですが、社長は「(プロセス数値を加えることにより)とてもスッキリした」とおっしゃっていました。
なぜ「スッキリした」とおっしゃっていただいたのか。その理由は単に評価項目として公平性があるということだけではありませんでした。それは次項で解説します。
前項で解説した(2)については、なかなかできていない企業が多いのでもう一度確認しておきましょう。業績評価項目の中には『結果数値』項目と『プロセス数値』項目があるということでしたね。次のような業績評価項目の会社があったとします。
(1)売上
(2)粗利
(3)営業利益
(4)新規獲得件数
(5)セールス電話件数
(6)(新規)訪問件数
(7)面談件数(決裁権限者との)
(8)企画書提案件数
(9)見積もり提案件数
このうち、(1)~(4)が『結果数値』、(5)~(9)が『プロセス数値』となります。
上記の業績項目だと新人営業パーソンでも高い評価を取ることが可能となります。また、外部要因で一時的に売上、利益が下がった営業パーソンも同じことが言えます。なぜなら(5)~(9)の【プロセス】ですから誰でも行動すれば高く評価されることが可能なのです。このようにして『結果数値』のみを業績評価項目とした場合の不公平感を解消できるのです。
もう一つ、この『プロセス数値』を評価項目とすることによるメリットがあります。それは、このプロセスを考えるという行為そのものが会社の営業の仕組みづくりにつながるということです。
そして、これが前回最後にお話した会社の社長が「スッキリした!」とおっしゃった理由です。その会社ではそれまでルート営業が中心であまり新規訪問営業を行っていませんでした。既存客を毎月集金のために訪問し、何かお客から言われたら自社商品の見積もりを持って行って成約というスタイルの営業だったのです。
つまりこの会社の成約(=売上計上)までのプロセスは「ステップ1:お客からの依頼(紹介も含む)」→「ステップ2:見積り(実はこの時点でほとんど成約)」→「ステップ3:成約(=売上計上)」と、2ステップか3ステップしかありません。そして、お客からのアプローチだけで新規も含む売上を上げてきたのです。これまでよくやってこれたなという感じですね。
ところが、やはりこの営業スタイルだけでは掲げた会社の売上目標も達成できないばかりか、売上はジリジリ下がる一方です。そこで、こちらからアプローチして新規開拓して売上を創っていこうということになりました。
そこで、新規売上を上げるための成約までのプロセスを検討してみると、
となり、プロセスが3?4ステップ増えたのです。
ここで、先ほどの社長は「なるほど!うちは本当の新規開拓営業は全くやっていなかったんだな。スッキリした!!」とおっしゃったのです。早速、この会社ではステップ1~6まで全てを『プロセス数値』として業績評価項目に加えました。
これは、まさにその会社の営業の仕組みなのです。そして、このプロセスを評価項目としていくことによって、社員に行動させることができるわけです。言い換えれば会社が儲かる仕組みを社員に行動させるということです。
いかがですか?なかなか評価基準づくりも奥が深いでしょう?ただし、今回お話した営業のプロセスはそれをやれば確実に結果につながるプロセスにしなければ意味がありません。ということは、しっかりとした戦略に基づいた営業プロセスが必要ということですね!
間違った戦略に基づいた営業プロセスだったらどうなるか・・・!?考えただけで恐ろしいですね。
最後は(3)の「業績項目以外の評価項目を強調する」についてです。
評価項目は、以下の4つの視点で考えていきます。
この中で、どうしても営業職の社員に対しては人事評価を行う場合、【1】の業績評価に重点を置いてしまいがちです。業績評価(=数値で判断できる評価項目)の中にもプロセス数値と結果数値があるというお話をしましたが、いくらプロセス数値を設定しても業績評価だけでは人を育成する評価の仕組みはできません。
企画力や提案力は数値ではどうしても測れません。情報収集や顧客管理についてはどうでしょう?営業職として必要な知識や技術はどのようにして判断しますか?チームで取り組み成果を挙げた場合のチームワークは?
提案力や交渉力は【2】の成果項目として、知識や技術については【3】の能力項目、チームワークは【4】の情意項目として評価を行うのです。
このように営業職に必要な『成果』や『能力』『情意』項目を考えて行くと10~15項目くらいになります。ということは、業績として評価して行く数値項目よりも数値以外の項目の方が項目数は多いということになります。ということは、もし、数字で結果が残せなかったとしても、それ以外の評価項目で挽回は可能ということになります。
事例である営業社員の仕事ぶりについての評価を考えてみましょう。
地場大手、トップ建設に勤める田中君(仮称)は4月に新しい営業所に転勤し、担当エリアが決まりました。
現在その会社が力を入れている商品は土地を所有する資産家に対してのマンション建築の提案でした。
早速、田中君はマンション建築が可能な空き地と建替えを行った方が収益が出そうな物件を担当エリアをくまなく調査し、リストアップ、所有者に対して会社案内やマンション建築に関する提案のDMを送付しました。
その内容は見込客の興味を引くのに十分な内容で、なんと30%の反応がありました。
反応のあった顧客に対して、それぞれの見込客が得られる利益が明確に解る企画提案書を作成し、直接訪問、60%(この段階で15人)の見込客から具体的な設計や収支シミュレーションの依頼がありました。
結局、12人が成約となり売上約15億円、粗利益約4億円の実績を田中君は上げることができたのでした。
成約が取れたのは9月1件、10月6件、11月5件、実際の粗利益が発生するのは翌年4月以降ということになりました。
ちなみに、田中君は成約件数、売上、利益とも営業10人中トップ。他の営業マンは2番の人が成約8件、平均的には5件の成約という状況で、田中君はダントツトップの成績だったわけです。
トップ建設の評価に関する決まりごとが評価期間4~9月、10月~翌3月評価項目売上、粗利益だけだったとしたらどうでしょう?
4~9月、10~翌3月の田中君の評価は最悪の評価結果となってしまいます。当然、みなさんだったら4~9月までの田中君の行動面に対しても高く評価されることでしょう。極端な例ですが、結果の数値や業績のみで評価をして行くとこのような矛盾も出てきてしまいます。
田中君を正しく評価するためには企画力や提案力、提案に必要な知識も相当高いものがなければこれだけの顧客を納得させることはできなかったでしょう。このような田中君の仕事振りを評価するためには業績以外の評価項目でしか評価できません。
業績を出すために必要な成果や能力とはなにか、これを機会に具体的に考えてみてはいかがでしょうか。