エイハン・ジャパン株式会社
代表:代表取締役 鎌田 悟司 相談役 佐久間 正エイハン・ジャパン株式会社様は、高所作業車の販売、レンタル、メンテナンスサービスを提供している会社です。高品質な高所作業車は、主に建設現場や商業施設などで使用されています。安全性と信頼性に重点を置き、高い対応力と技術力で、お客様の生産性と利益に貢献されています。コロナ禍や急激な円安によって利益獲得が難しい状況に直面しましたが、全社員で団結して顧客拡大を推進され、2023年度は過去最高売上、最高利益を達成しました。
今回は相談役の佐久間様より2017年よりスタートした「ROAD TO HAPPINESS PROJECT」導入時の課題をどう解決していったのか、人材育成を通じた幹部、社員の変化、そして今後の展望についてご紹介します。
私は創業前、アメリカメーカーの高所作業車をレンタル、リースしている会社で代理店部門の事業責任者として勤務していました。
当時、会社として、メイン事業以外から撤退する動きがあったため、代理店事業の買収をアメリカ法人に自ら直談判して会社を立ち上げました。高所作業車の多くの需要がレンタル会社であるため、独立した方が販売会社としての発展性があると判断したためです。
また、サラリーマンよりも社長業の方が面白そうだと感じましたし、「外資系企業の日本法人の社長」はなんとなくかっこいいと考えたことも理由の一つです(笑)。ありがたいことに、現在の幹部メンバーは、独立に対して声かけをした際に賛同してくれた仲間たちです。新しいステージに魅力を感じてくれたメンバーで創業したことで、事業の成功に向けて力強いスタートを切れました。
しかし2000年に事業を開始しましたが、2001年にアメリカ法人の倒産により、製品のデリバリー、品質が悪化しました。2014年までは提供面、品質面では国内メーカーとの差があり、顧客の求める品質基準にマッチさせることに苦労したのを鮮明に覚えています。
レンタル会社への販売計画が創業当初から頓挫してしまい、小口の需要へ販促していくというポジショニングの変化を余儀なくされましたが、結果としてここで差別化を図ることができました。競合はレンタル会社に安く、大量に販売するという方法ですが、我々は小口の需要に丁寧に対応するという部分で、他メーカーとの差別化が実現できたのです。
当社は、日本人事経営研究室さんにサポートを依頼する以前から評価制度を運用していましたが、賃金制度については私自身、腑に落ちる感じがありませんでした。また、評価基準もグレードごとに整備されていない状態でした。そのため、社員からは将来のキャリアイメージが明確にならず、不安があるとの意見もありました。給与水準を含めて働きやすさや居心地は悪くはないが、将来性について不安を抱くような会社だったと思います。
そこで、「賃金規定」というキーワードでネットを検索し、日本人事経営研究室のことを知りました。他にもコンサルティング会社を比較検討しましたが、賃金規定に主眼を置かず、経営計画と評価制度を連動させ、社員と会社の成長がびつくことで社員のモチベーションを高めながら業績を伸長させる仕組みであることに魅力を感じました。この「ビジョン実現型人事評価制度®」を知ったとき、迷わずサポートを依頼することを決定し、2017年7月より「ROAD TO HAPPINESS PROJECT」をスタートしました。
まず、理念体系を含めた経営計画を刷新するとともに、これから「ビジョン実現型人事評価制度®」を導入していくということを全社員に発表するため、キックオフ発表会を行いました。
キックオフ後に社員アンケートを実施したのですが、予想通り、一般職社員からの反発がありました。「新しいことをやる前に改善するべきことがあるだろう」という意見があり、勤務時間管理方法や、有給取得、残業申請のルール等、就業規則の改定を先にするべきという意見が多かったです。働きやすさや居心地の良さで大目に見てくれていた細かい点に不満がでてきた形でした。
しかしながら、幹部メンバーを中心として経営計画の策定を進めていたことで、幹部との意思統一ができており、社員からの反対意見については、今回のPJの目的を説明するなど、幹部がしっかり対応してくれ、一定の変化を感じることができました。
すぐに一般職社員全員の理解を得ることは難しく、3年程度かかりましたが幹部のサポートがあったからこそ、現在では全員の理解を得ることができています(日本人事経営研究室さんが実施している年に一度のプロジェクト浸透度調査のスコアから客観的にも明らかです)。
現在は改善されましたが、実際は5年ほど前まで製品品質に一部課題がありました。幹部である営業責任者やサービス責任者でさえ、「品質に課題のある製品で成長を目指すことなんてできない」と考えている状況であり、幹部がこの認識では当社の将来性がないと考えていました。
しかし、本プロジェクトにおいて、将来の事業計画を幹部メンバーと一緒に立案することで、20人の社員の将来をつくるために、品質改善の話ばかりではなく、品質が悪いなら何をするべきか、経営層として本来考えるべきことは何かという話を直接話せる場を設けることができ、幹部の意識が変わったように思います。
社員の変化については、当初は「グレードレベルイメージ」(グレードごとに求める仕事レベル)が明確に伝わっておらず、漠然とした先輩後輩という関係性で仕事をしていました。しかし、評価制度導入に際してグレードレベルイメージを明文化することで、その理解が浸透し始めました。組織全体での役割や責任の明確化が進み、特にL(リーダー)グレードとS(スタッフ)グレードの関係性において変化がありました。Lグレードの社員たちは、自身の役割としてSグレードの指導や支援を行うことを自覚し、積極的にその役割を果たすようになりました。一方、Sグレードの社員たちは、Lグレードからの指導や支援を受けることで、自身の成長やスキル向上に繋げることができるという意識が高まりました。
また、「アクションプラン」の中に、「『ROAD TO HAPPINESSPROJECT』を浸透させる」というプランを入れることで、理念浸透に対するミーティングをアクションプランリーダーが中心となって実行する仕組みがつくれました。社長、幹部が伝えていくだけではなく、社員同士の活動を推進することで、浸透度を高めることができました。
人材育成については一番難しいところで、まだ課題が残っています。個人のスキルアップのためであれば、自己投資に対して会社が経済的な支援をするという方針を公言していますが、なかなか手を挙げる人材が少なく、自ら英語を勉強したいなど自発的な意見がもっと出てほしい状況です。
対策としては、英会話やEラーニング、そして「チャレンジシート」の活用とその進捗状況を評価にも反映することで、スキルや知識を向上させるための行動に取り組んでもらうための工夫を行っています。社員間の競争原理が働く仕組みを構築し、人材育成に対する投資を継続することで、自己スキルアップに取り組む意識改革と風土づくりを進めていきたいと考えています。
まずは風土づくりということで、難しい課題ではありますが、評価制度と結びつけることで継続的に諦めずに今後も社員教育を進められると感じています。
本プロジェクトを開始して6年半が経過しました。おかげさまで、私は23年12月の決算をもって社長職を退任し、営業責任者であった鎌田が新社長に就任しました。
新社長の選出方法については、社員全員によって、幹部4人から後継者を選ぶという方法を採用しました。Lグレードメンバーを中心として全社員で話し合いをさせることで、後から否定的な意見が出ないよう、全員一致の結論を導き出すことを目指しました。
また、アメリカ本社の代表が承認しないと、事業承継ができないという状況でしたが、当社の実績状況が好調であったこともあり、無事に承認を得ることができました。
今後は、鎌田の社長就任に伴い、リーダーグレードからマネジメントグレードに昇格する人材が現れることが予想されますので、新体制の確立と次のステージの成長に向けたダイナミズムのある人材配置が必要と感じています。従来のイメージにとらわれず、個々の能力や成果に基づいた適切なグレード設定を行っていきたいと考えています。
そして、当社の横浜倉庫については、大型機械の販売による事業の成長に伴って、移転拡大を検討しています。この展開は非常に重要な転機になると期待しています。そのためにも、IT化、DX化の推進には、今後一層の力を入れていく方針です。中小企業の生産性が低い理由の一つは、IT化とDX化の
遅れにあると考えています。当社においては、計画的な投資と努力を継続し、業務プロセスの効率化を目指していきます。
私は、新しいことを取り組む際には、必ず困難な時期、絶望の谷があると感じています。一度は盛り上がって取り組みを進めますが、途中でモチベーションが下がり、谷に落ちるタイミングがあるのです。そして以前の方がよかったという考えになり、リーダーが妥協し、計画が中途半端に終わる
ケースが多く見られました。
「ROAD TO HAPPINESS PROJECT」の導入後は、その様な時に、担当コンサルタントの池尻さんが幹部の意見をまとめ、進行役としてリードしてくれました。社長の私が関与すると問題が生じる可能性があるケースでも、池尻さんが方向性を導いてくださり、その結果、うまく計画を進めることができたと思います。
また、社員が長期的なビジョンをもって仕事をするようになったと思います。経営理念、基本方針などによって仕事の進め方に迷ったときに指針を得ることができました。私個人としては、給与、賞与の決定が客観的に仕組み化され、支給額の試算まで日本人事経営研究室にお任せできたので、余計な気を遣わないようになり、目標と戦略に集中しやすくなりました。
社長として、私は忍耐力と辛抱強さを持ちながら、時には悲観的になることもありました。しかし、社長退任の年に、一つの夢であった売上10億を達成することができました。この目標の達成は、社員全員の協力があったからこそ、成し遂げることができたと思っています。社員一人ひとりに感謝の気持ちを伝えたいと思います。後継者の鎌田と幹部メンバーには、「ROAD TOHAPPINESS PROJECT」を無事に引き継ぐことができました。これからも「ビジョン実現型人事評価制度®」と共に、さらなる成長を目指していきたいと思います。