有限会社かずや
代表:代表取締役 荒木 毅今回は、熊本県玉名エリアを中心に冠婚葬祭業を展開されている、かずやグループ様を紹介します。かずや様は創業100年超の老舗企業であり、「社員の幸福の実現」と「地域に愛される企業」を理念に掲げ、葬儀業を柱に、互助会、生花店、フォトスタジオ、貸衣装店と強みを活かして事業活動を推進し、成長・発展しています。「温かくて優しく、満足いただけるサービス」を全社員で実践し続けた結果、家族3代でかずや様を利用してくださっているお客様も多く、地域の方に信頼され、愛されています。2013年から法事場としても利用できる和食レストラン事業もスタートされ、企業として更なる成長を遂げようとしています。今回は6代目社長である荒木毅様に、導入の経緯からリーダー成長のプロセスをお話いただきます。
当社は創業100 年を超える老舗企業です。私はカナダの大学を卒業し、かずやグループに入社したのが28 歳のときでした。当時、社内には経営理念こそ立派な額縁に入れて事務所に飾ってありましたが、経営計画書などはなく、部門間の連携も希薄で個人個人が担当業務をこなしているという状態でした。会社の状態は上向きではありましたが、社員の経営への参画意識はとても低いと感じていました。
2011 年当時、私は、本部長という役職に就いておりましたが、3 年以内の事業承継が決まっていたこともあり、会社の将来をどのように描いていくべきか悩んでいました。そんな中、一冊の本に出会います。その本が、山元さんが書かれた『小さな会社は人事評価制度で人を育てなさい』でした。「企業が成長するためには経営計画書を明確化し、経営計画書と一体となった人事評価制度を実践することで人材育成の仕組みをつくること」という考え方に感銘を受け、直接面談を申し込み、コンサルティング契約を決意しました。
当社は本プロジェクトを『Change the Future Project』と命名し、2011 年1 月よりスタートさせました。当初のメンバーは当時本部長であった私と担当コンサルタントの池尻さんの2 名のみでした。経営理念を見直し、初めての中期事業計画、経営戦略づくりに取り組みました。そして、2011 年4 月、全社員を司ロイヤルホテルに集合させ、初の経営計画発表会を開催しました。会場には社員はもちろん、当時社長であった父、父を長年支えてくださった繁松専務も出席していましたが、新しい取り組みを温かく見守ってくれました。
経営計画書の発表を通じて、初めて会社の状態(業績数値)と将来のビジョンを全社員に公開することができました。そして、会社の理念、目標と目指すべき社員像に沿って、人材育成のための仕組みづくりをスタートさせたのです。
このころから、部門のリーダー格の社員をプロジェクト会議に同席させるようになりました。ただ、正直に言って、当時の彼らは、この取り組みに本心では共感していませんでした。「業務が忙しいのに、なぜ会議に参加しないといけないんだ」「部下の評価や育成なんて面倒だ」というのが本音だったと思います。
しかし、この気持ちに変化が見られる時期が来ます。きっかけは、部下の評価を実施し、その結果を育成面談で伝えるようになったことです。評価基準に沿って、部下の良いところと課題を明確に伝達できるようになると、部下との日頃のコミュニケーションや指導方法が変わってきました。自分たちが作った評価基準を使って、現場での業務指導ができるようになり、「この提案ならA 評価だよ」「この報告のしかただとC 評価だな」など、日常業務の中で自分たちが作成した評価基準に沿った会話が生まれるようになったのです。
この経験を通じて、部下と求める仕事レベルや目標を共有することの大切さに気づき、毎月のプロジェクト会議でもリーダーからの発言回数や改善提案が増え
ていきました。人事評価制度は、部下を育てるためのツールであるということに気づいたのです。
目標を決めて部下とのコミュニケーションを継続するという経験が、リーダー育成の下地をつくってくれたのではないかと思っています。
翌年の経営計画書づくりから、部門のリーダー社員と一緒に取り組むよう、プログラムを変更しました。リーダー全員でSWOT 分析を実施し、部門ごとの戦略とアクションプランを明確化していきました。業績向上を目指してアクションプランを推進し、評価制度によってその結果と各自の成長を評価する。この体験の繰り返しでリーダーが育ちました。
やはり、成功体験の積み重ねは重要であったと感じています。この経験も今期で3 回目です。現在では、年度末の3 ヶ月前から担当部門の戦略とアクションプランを見直し、再構築するという流れが当たり前に実践できるようになり、計画の実行力も3 年前とは比較にならないくらい向上しています。
ビジョン実現型人事評価制度®への取り組みを通じて、各部門のリーダーの業績に対する意識が格段に向上しました。今まで皆無といっていほどであった部門間の連携にも、お客様向けイベントを全部門のアクションプランに記載することで、大きく改善し、交流が生まれています。
2015 年4 月には、無事、事業承継を完了させ、代表取締役に就任させていただきました。経営計画書とアクションプランの精度向上、評価者研修の継続実施、評価制度と連動した賃金制度の稼働、飲食部門への人事評価制度の導入など、課題はたくさんありますが、この仕組みを通じて、全て解決できると確信しています。
「社員の幸福」と「地域に愛される企業」を目指し、日本人事経営研究室さんにはパートナーとして更なる支援をお願いしたいと思います。