株式会社アクト
代表:代表取締役 伊藤 啓介今回は一都三県及び富山、福岡に工具専門リユースショップ「アクトツール」を15店舗展開している「株式会社アクト」様をご紹介します。
同社は、主に工事現場、工場、農場などで利用される工具全般の買取・メンテナンス・販売を手掛け、リユース工具専門店の先駆者として独自の地位を築いています。
度々、山元の著書や弊社が開催しているユーザーシンポジウム※などで、ご紹介している会社様ですが、近年、幹部・リーダークラスの社員が相次いで退職する事態が起こりました。
しかし、そのような中でも、「ビジョン実現型人事評価制度®」を導入してから11年目となる2022年7月の決算では11年連続の増収を達成、また売上は導入前の4.3倍となり、組織の成長が止まることはありません。
今回は、アクト様が伊藤社長を中心に、「ビジョン実現型人事評価制度®」を型通りに運用、改善し、PDCAを回すことで、組織の変化に見事に対応した具体的な取組み内容をご紹介します。
※ユーザーシンポジウム:日本人事経営研究室のクライアントが「ビジョン実現型人事評価制度®」の実践状況と成果を発表するイベント
株式会社アクトは、2011年から「ビジョン実現型人事評価制度®」の取り組みを開始し、現在日本人事経営研究室さんにコンサルティングをお願いして12年目に入りました。
組織は社員100名規模となり、当時店長だった社員も幹部メンバーとして店長やリーダークラスの社員の評価を任せるまでの存在となったのですが、約1年ほど前に幹部メンバーが相次いで退職し、彼らを慕う一部のリーダークラスの社員も退職する事態が起こりました。
しかも、数か月後に彼らは我々の競合として会社を立ち上げ、近隣で事業を展開していることが発覚し、社内に動揺が走りました。
現場を最もよく知る社員が相次いで退職したことで、エリア、店舗間の連携も上手くいかず、クレームやトラブルを発生させるケースも散見されました。
しかし、「経営理念に対して、ベクトルが合っていないから辞めた。今後組織が更なる成長を遂げるためには必要な過程だった」と信じ、現場の社員とこれまで以上に、膝を突き合わせ向き合っていこうと改めて決めました。
幹部メンバーの退職を機に、現場の店長クラスの評価については私が実施をすることになり、評価人数が2名から15名に一気に増加しました。直近の評価では半年間の振り返りをしようとしても、元々評価を行う予定ではなかったため、現場での行動を細かく見れていませんでした。そこで、会議の場などでの発言や行動で評価を行いました。
この時のアンケートの結果では「最終評価判定に納得できましたか」の問いに98%の社員は「納得した」と回答してくれていたものの、現場社員から「普段現場にいない社長から評価をされることに違和感がある」旨の意見をもらい、『これから継続した課題となるな』と思いました。
今振り返ると、この時のことは、道半ばの部分もありますが、在籍しているメンバーのレベルアップに繋げるために、何を改善すべきかをプロジェクトメンバーと明確にできた期間だったと前向きに捉えています。
育成面談アンケートの結果を踏まえ、「ビジョン実現型人事評価制度®」を運用していく中で、現状の運用方法から社員に寄り添う「改善」が必要だと痛感しました。
そこで、まずは「アクト人間力・成長曲線“見える化”プロジェクト」のプロジェクトメンバーに現場のリーダー社員を毎月参加させることにしました。これまでの会議は、私と幹部社員2名、日本人事経営研究室さんの計4名で会議を行っていましたが、現場の意見を聞き、スピーディーに改善を行うために決定しました。
次に、各種資料のフィードバックを全社員に漏れなく実施し、人事評価制度に対する進捗を全て見える化した取り組みを実践しました。
これまで曖昧になっていた育成面談アンケートへの回答は、私が内容をピックアップして直接発信するなど、社員の意見をそのままにしない、“言っても無駄”という空気をつくらないようプロジェクトメンバーと連携して取り組みました。合わせて「評価基準の改善」意見も社員から出やすくなるよう、クラウドシステムから評価を配信する際に再周知を行ったところ、前回(22年1月)に実施した評価では、合計で35件の改善提案がありました。そこから採用した意見は、早速、次の評価に反映させました。
また、「行動基準」「スキルマトリクス(仕事に必要なスキルをまとめた表)」も実態に合わせて修正に着手しました。「行動基準」については通常の行動基準以外に「パート社員用」「管理者用」の2種類を新たに追加。特に「パート社員」の基準についは評価基準の改善意見をもとに作成し、運用しています。
「スキルマトリクス」についても、これまでは評価の付け方に統一認識がなく、人によって異なる評価をしていました
が、スキルの定義付けを明確にして評価を実施しています。特に副店長以上の社員はマネジメントの意識を持ってもらうため、求められるスキルの項目も変え、「現状」ではなく「将来」目標達成し続けるために、活躍できる人材の育成という観点で評価制度を運用しています。
今後は、育成会議後に毎回スキルの分析をおこない、店舗、個人それぞれのスキルの均一化を図る取り組みを日本人事経営研究室さんと一緒におこなう予定です。
最後に評価者のレベルアップにも改めて取り組みを始めました。
全評価者を対象とした研修を半年に一度のペースで実施しています。この研修では、評価のつけ方、育成面談への取り組み方、生産性を高く保つための考え方等を再確認したり、評価実施時に起こる問題などを共有する場となっています。
評価者からは「部下、パートの評価制度への理解が低いのではないかという気づきがあった。より理解を高められるように一から説明して行こうと思う」「前回から忘れている点もあり、今回もこのような形で研修をして頂きとても有難かった」「評価一つで相手のモチベーションが大きく変わってしまうことを理解し、相手の成長に繋げられる評価ができるようにしていければと思う」などの声があり、研修を繰り返し継続していくことで確実にレベルアップが図れる内容であることを実感してくれているようです。今後も日本人事経営研究室さんと一緒に取り組んでいきたいと思います。
22年6月に経営計画発表会をおこない、2030年度のビジョンとして売上50億達成、アクトグループとフランチャイズ合わせて50店舗展開を目標に掲げました。
この目標は社内外の環境が変化する以前から変えていません。
今後も「ビジョン実現型人事評価制度®」を型通りに全社員で運用していくことで必ず実現できると確信しているからです。
目標達成していくためには今在籍している約100名の社員の成長が不可欠です。
継続して評価制度の改善およびアクションプランを主体的に推進し、社名にもあるTRANSFORMATION(変革)を続け、目標達成し続ける組織として社員と共に成長し続けたいと思います。