「情意考課(情意評価)」は経営理念の実現に不可欠、人事評価に取り入れる際の5つのポイントとは
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本記事では、以下のような疑問にお答えして行きます。
- 情意考課ってどのようなもの?
- 情意考課でどのような効果を生み出せるのか?
- 人事評価で情意考課を行うポイントは?
さて、この記事をご覧になっている皆さんは「情意考課(情意評価)」という言葉をご存知でしょうか? 情意考課とは、簡単に言ってしまうとその社員が会社のビジョンに沿った働きをしているか否か評価するもので、人事評価において重要かつ困難なものとされています。
「企業は人なり」という言葉が表すように、人事評価は企業の持つビジョンや経営方針を実現するために大きな役割を担います。その中でも、情意考課は特にビジョンの実現へ近い役割を持つと言って差し支えないでしょう。
また、数値で表せる評価軸でないことから情意考課において正確な評価を下すことは非常に困難なもの。しかし、ポイントを抑えておくことで評価のブレを防ぎ、より有能な人材の登用を見込めるでしょう。
本記事では、情意考課について分かりやすくご説明します。ですがその前に、まずは簡単な本記事の概要をご覧下さい。
- 情意考課とは、人事評価のうち当人の勤務意欲やビジョンを見る評価
- 情意考課を適切に取り入れることはビジョンの実現に重要
- 正確に情意考課を行うためいくつかのポイントを抑えておくべき
それでは、さっそく情意考課について詳しくご紹介します。
情意考課(情意評価)とは?
情意考課(情意評価)とは、人事考課(人事評価)を行う際に取り入れるべき評価軸の1つで、評価対象の従業員がどの程度意欲を持って勤務しているか、どの程度会社のビジョンに沿った行動をしているか評価するものです。情意考課も情意評価も同じ意味です。
他に人事考課において考慮すべき業績・成果・能力などとは違い、情意考課においては評価者の主観が非常に入りやすく、一般的に情意考課は人事評価においてあまり大きなウェイトを占めるべきではないと考えられています。
しかし、情意考課は適切に行うことで従業員の目指すべき人材像・行動理念を明らかにし、会社の持つ経営理念やビジョンを実現するための大きなファクターとなり得るものです。正確な評価が難しいからと言って、簡単に軽視してしまえるものでは無いでしょう。
人事評価における情意考課の役割
先述の通り、人事評価において情意考課は非常に大きな役割を果たします。
例えば、仕事に対する熱意は単なる数値で測ることは出来ませんが、その一方で社内のモチベーションや今後の成長などに大きく寄与することは火を見るよりも明らか。こういった、いわば「人間力」的な面を評価するための評価軸が情意考課です。
このような情意考課が持つ役割は、「成果主義からの脱出」というワードに集約されると言えるでしょう。
従来の成果主義的な人事評価では、「結果さえ出せばプロセスは関係ない」という風土を組織内で培いかねませんでした。しかし、これからの時代においては情意考課を適切に用い、組織内のモチベーションを向上させることを見据えなければなりません。
情意考課は短期的な効果こそ見込めませんが、長期的な投資としては非常に効果的なものと言えます。人事評価の際は、この点をきっちり念頭に入れておくべきでしょう。
経営理念の実現に欠かせない「情意目標」を定める
「情意目標」は、経営計画の行動理念と直結した項目です。仕事に対する姿勢や考え方を評価します。例えば、「積極性」「責任感」「チームワーク」「成長意欲」などといった、会社の理念を実現するために社員全員が実践するべき行動を定めます。
「情意目標」は、自社の社員としての資格を問う部分でもあります。それゆえ、全社員が真っ先にクリアしなければならない、重要度が高い項目です。
考え方は行動レベルに落とし込んで評価する
考え方を評価するのは容易ではありません。他人の頭の中を覗くことはできないためです。そこで、実際は仕事の中での行動レベルに落としこんで評価を行います。例えば、「積極性」のある行動とは、「新しいことや経験のない仕事に、自主的に取り組んでいた」ことを評価の対象とすると決めるのです。
他の項目も理想とする行動レベルに落とし込んで評価することで、明確な判断ができます。情意目標は仕事に対する姿勢を問う根本的なものなので、最低でも「B」評価が取れなければ、社員失格といえるでしょう。
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情意項目のウェイト配分の考え方
評価基準ができたら、今度は評価項目ごとに点数配分を決めなければなりません。評価結果は、最終的に点数化して判断をするためです。項目ごとのウェイト配分の考え方を、3つの面から解説します。
情意項目以外の業績項目、成果項目、能力項目については、以下の記事をご参考ください。
評価項目の決め方、行動に結びつける人事評価の4つの項目
グレードごとのウェイト配分
評価基準のカテゴリーとしては、上位項目の他に「業績項目」「成果項目」能力項目」があります。この4つから、それぞれのウェイト配分を考えます。
「業績項目」のウェイトは、数値責任を求められる管理職になるほど重くした方がいいでしょう。下位グレードは小さく、上位グレードになるほど大きくします。
一方で、「情意項目」のウェイトは、情意グレードが小さく、下位グレードになるほど大きくすべきです。これは、下位グレードの社員にとって重要な、仕事に対する考え方や姿勢をしっかり身につけてほしいためです。これは「能力項目」についても同じです。勉強に励み、能力を身につけてほしい下位グレードの社員ほど、大きなウェイトを分配するようにします。
業績項目の考え方や設定方法は以下の記事で詳しく解説しています。
業績プロセス項目を盛り込んだ業務評価の方法、職種・部門別の業績評価項目の事例
部署ごとのウェイト配分
さらに、評価のウェイト配分はグレードだけではなく、部署や職種によっても差をつけましょう。とくに業績項目のウェイトについては、配慮が必要です。営業的な生活が強い部署は業績項目のウェイトを大きくし、事務的な性格が強い部署は小さくします。
仕事の重要度で評価ウェイトの配分を見直す
次に、仕事の重要度別に各評価項目に点数を配分します。社員の成長度合い、求められる仕事のレベルに応じて、重要度を考えながら項目ごとにウェイトを振っていきます。下の「総合ウェイト配分表」を参考にしてください。
この際、会社が戦略的に重視する項目に大きなウェイトを置くのがポイントです。例えば、新入社員が一番初めに教わる「報告・連絡・相談」。これは下位グレードに早く覚えてもらいたい仕事のため、下位グレードのウェイトを大きくします。
同じように、『部下の指導育成』は上位グレードの重要な役割です。したがって、こちらについては上位グレードのウェイトを大きくします。
会社として強化していきたい部分にも、同じ考え方ができます。製造業で、商品に対する改善案を社員に強く求めたい場合は、「改善提案」のウェイトを高くするといいでしょう。
ウェイト配分を決めるのは、時間のかかる作業です。評価の合計点が合わないときは、何度も微調整が求められます。下記に、「総合ウェイト配分表」の例を示しましたので、ぜひ参考にしてください。
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人事評価に「情意考課」を取り入れる際の5つのポイント
いくら情意考課が重要だとは分かっていても、情意考課が非常に主観的なものである以上社内からの不満を恐れて情意考課を重視できない人事担当者も多いはず。
しかし、適切なポイントをいくつか抑えておくことで情意考課は一気に正確なものとなり、大きなシナジーを生むことになります。以下のポイント5つを抑えて、適切な情意考課を行いましょう。
感謝
上司、同僚、部下、取引先などと、業務においては多くの人々と関わることとなります。その中で、何事にも感謝出来る人材は人間関係を円滑にし、将来的により大きな功績を挙げることが期待されます。
積極性
積極性の有無は、数年~十数年でその人材の成長を決定的に変化させます。その時点では成果を上げていたとしても、積極性がなければ成長も見込めず腐っていくのみ。有望な人材を適切に評価すべく、積極性をチェックしましょう。
地域貢献
たとえ営利企業とはいえ、近年の傾向として企業にも地域貢献活動などのCSRが求められる時代になりました。そんな中で、地域貢献を重んじる社員を雇用している企業は自ずと地域から愛され、長く続く企業となるでしょう。
責任感
新人のうちならまだしも、勤続数年が経過すれば中間管理職などへの登用も話に上がってくることでしょう。そんな中で責任感のある人材にはより大きな役割を割り当てることが出来、円滑な人事に大きく貢献します。
思いやり
どんなに有能な人材でも、社内がギスギスとしてしまっていたら100%のパフォーマンスを発揮することは出来ません。思いやりを持ち、周囲に気を配れる人材こそ、周囲も含めた社内のパフォーマンスを向上させると言えるでしょう。
おわりに
本記事では、情意考課の概要や情意考課に際するポイントをご紹介し、情意目標の大切さや各項目のウェイト配分について解説しました。情意考課を適切に用いることで、企業の成長やビジョンの実現を見込むことが出来ます。人事評価の際はぜひ情意考課について見直してみてはいかがでしょうか。
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この記事を監修した人
代表取締役山元 浩二
経営計画と人事評価制度を連動させた組織成長の仕組みづくりコンサルタント。
10年間を費やし、1,000社以上の経営計画と人事制度を研究。双方を連動させた「ビジョン実現型人事評価制度®」を480社超の運用を通じて開発、オンリーワンのコンサルティングスタイルを確立した。
中小企業の現場を知り尽くしたコンサルティングを展開、 “94.1%”という高い社員納得度を獲得するともにマネジメント層を強化し、多くの支援先の生産性を高め、成長し続ける組織へと導く。その圧倒的な運用実績を頼りに全国の経営者からオファーが殺到している。
自社組織も経営計画にそった成長戦略を描き果敢に挑戦、創業以来19期連続増収を続け、業界の注目を集めている。
著書に『小さな会社は経営計画で人を育てなさい!』(あさ出版)、『小さな会社の人を育てる賃金制度のつくり方』(日本実業出版社)などがある。2020年2月14日に15刷のロングセラーを記録した著書の改訂版である『【改訂新版】3ステップでできる!小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方』(あさ出版)を出版。累計14万部を突破し、多くの経営者から注目を集めている。
1966年、福岡県飯塚市生まれ。
日本人事経営研究室は仕事創造型人材を育て、成長し続ける強い企業づくりをサポートします
私たち日本人事経営研究室は、"人間成長支援"をミッションとし、
中小企業の持続的成長をサポートしています。
「人材」ではなく「人間」としているのには、こだわりがあります。
それは、会社の中で仕事ができる「人材」ではなく、仕事を通じて地域や環境、社会に貢献できる「人間」を育てる事を目指しているからです。
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