株式会社たかはし葬儀社様は、宮城県名取市に本社を置き、地域に寄り添った葬祭業務を提供している会社です。
2020年12月からスタートした「人財成長プロジェクト」を通じて、4年間で2.3倍超の成長を実現され、直近では従来の葬祭サービスに加えて、新規事業として樹木葬事業を立ちあげ、地域の皆様に対して葬儀を中心とした顧客生涯価値の向上にチャレンジしています。
今回は、本プロジェクトにおいて、たかはし葬儀社様が組織改革を推進し、人材育成を通じて社員と組織全体に起きた変化、そして今後の展望についてご紹介します。
私は大学4年のころから、知り合いの葬儀会社で2年間修業した後、たかはし葬儀社に後継者として入社しました。入社当時から、「今後の会社経営には明確な理念が必要である」と感じ、自己流で勉強して作成しようとしていました。もともと、理念経営という経営手法に興味・関心が高かったので、大手の理念を調査しながら、自分なりに考えていました。
その後、2011年に33歳で社長に就任するのですが、東日本大震災の時期でした。当時の社長は祖父であったため、事務所の建て替えや融資を受けるうえで、今後の経営上の負担をかけさせられないと考え、経営者として覚悟を決めるためにも、自ら社長交代を提案して就任したのです。もともと経営上の実務は全て担当し、いずれはと考えていたので、判断は早かったです。
当社が日本人事経営研究室とかかわる前の状況は、多くの深刻な組織課題を抱えていました。最も大きな問題は人材の確保と定着で、人が入ってこない、入ってきても長く勤められないという状況が慢性的に続いていました。
組織運営面では、目標が全社で共有されておらず、社員の評価や給与が適正かどうか、経営者として自信が持てない状態でした。また、社長である私が葬儀現場の指示出しなど当日の指揮を執るケースが多く、夜間対応も自らが行っており、現場業務に追われて本来の経営業務に集中できない状況が続いていました。結果として、職場の雰囲気は暗く、葬儀の仕事が入ると嫌々業務を行う社員も見受けられました。組織全体に活気がなく、前向きな成長への意欲を感じられない状態だったと思います。
このような状況を根本的に改善するため、まずは適正な賃金制度を整えたいという思いから、山元さんの書籍「小さな会社の人を育てる賃金制度のつくり方 ~『やる気のある社員』が辞めない給与・賞与の決め方・変え方~」を手に取ったことが最初のきっかけでした。
当初、サービスを知ってから依頼するまでには躊躇もありました。当時の私の感覚では高額な費用であったこと、本当に費用対効果が見込めるのかという不安、他社との比較検討、そして、そもそもコンサルティングサービスをあまり信用していなかったことなどが理由でした。それでも、書籍の内容と自分の考えに多くの共通点があり深く共感し、最終的には「駄目だったら授業料を払ったと思えば良い」という覚悟を決めてビジョン経営実践塾への参加に踏み切りました。
2020年4月、ビジョン経営実践塾卒業後に人財成長プロジェクトを本格的に開始するため、日本人事経営研究室さんとの業務委託契約を決めていたのですが、その矢先にコロナ禍で緊急事態宣言が発令され、業績の見通しにリスクがあると判断し、担当予定であった池尻さんに相談して開始時期の延期をお願いしました。コロナ禍による葬儀体制の変化への対応と収益構造の改革を優先課題とし、コロナ禍のオペレーションをおおむね確立させ、なんとか半年後にスタートを切ることができました。まだコロナ禍であったものの、早期にプロジェクトの本格稼働を決断したことが成長のきっかけになったと確信しています。
2020年12月、当時は社員7名の小さな組織でしたが、私、実姉である取締役の細谷、当時の葬儀課長、現在は葬儀課長に成長してくれた係長の佐藤の4名をメンバーに選定し、池尻さんのサポートのもと日本人事経営研究室のコンサルティングをスタートしました。組織の半数がプロジェクトメンバーという状態でした。社員10名未満の組織で、「このような取り組みを進めることは早いのではないか?」と感じることもありましたが、いま振り返ってみると、小さな状態から取り組みを始めたことで、組織のベクトルを合わせやすく、制度の浸透も効率的にスピードをもって進めることができたため、大きなメリットであったと実感しています。
「社員数が少ないのでまだ自社には早いのではないか?」と考えている社長の皆様には、「社員数が少ないうちから取り組むことで、大きな成果を生み出すことができた」ということを伝えたいと思います。
実際にコンサルティングがスタートしてからは、「決めたことは必ずやり通す」という姿勢で臨みました。従来の「やらなくても良い雰囲気」を排除し、基本方針と行動理念に紐付けた考え方で改善点を社員に伝えていくことに重点を置きました。まずは日本人事経営研究室の考え方を理解するつもりで、みらい人材アカデミーの講座を計画的に活用し、「社長が一番学ぶ」を率先して実践しました。
また、事業計画の立て方について重要な転換がありました。当初は現状からの積み上げ型で計画を作成していたため、10年後の目標は5億でしたが、山元さんから「なりたい姿を先にイメージした方が良い」とアドバイスを受け、10年後の目標を13億に修正しました。その結果、社長である私の思考が拡張され、組織の成長が加速するという実感を得ることができました。また、高い目標を掲げて全社員と共有することで、経営者としての覚悟を固めることもできました。事実、5億という数字は取り組みを始めて4年が経過した時点で達成することができました。「社員をより豊かな状態に導いていける」という確信を得て、経営計画を組織全体に浸透させることで、目標と戦略をつかって進むべき方向性を明確にし、判断基準の統一と価値観の共有を図ることができたと思っています。
最も顕著な変化は職場の雰囲気の改善です。評価制度導入後、面談を通じて社員と対話をする機会が増え、役割を明確化して任せていくことで、リーダーを中心に自発的な発言や行動をとる社員が増えていきました。組織全体が成長し、暗い雰囲気から明るく活気のある職場環境へと変わっていき、社員の自信や働き甲斐が大幅に向上していることを実感しました。社員のモチベーション向上により、組織全体のベクトルが揃い始め、着実に全社員が同じ方向を向いて努力する組織文化が根付いてきています。
導入前は社長以下が文鎮型の組織で、私から社員へ細かく指示していましたが、リーダーが育成されたことで、現在では私が現場の仕事を担当することはほとんどなくなりました。その結果、経営中心の業務(6つの仕事の上位階層)に集中できるようになりました。今後は社長として、より強く成長し続ける組織を創っていくことが新たな課題となっています。
また、組織の成長は数字としても表れ、売上が大幅に向上し、プロジェクト開始から5年間の成長率は232%という結果でした。組織の活力向上と効率的な業務運営により、収益性も改善しています。働く環境の整備にも取り組んできた結果、賃金の引き上げ、休日の充実、有給休暇の取得率向上など、具体的な成果が表れています。
人材面では、理念に共感する人材が入社してくれるようになり、継続率も大きく改善しました。採用活動においても、当社の理念やビジョンに共感した質の高い人材を獲得できるようになりました。以前は社員を辞めさせないように対応することを意識していましたが、今では「当社の理念に共感した人材が継続し、共感できない社員は早期に去っていく」という、組織の新陳代謝が当たり前に起きるという感覚になってきています。
今後は、新しいメンバーや次のリーダー・管理職への制度の浸透が、中長期的な課題と考えています。組織の成長に伴い、新たに加わるメンバーにも「ビジョン実現型人事評価制度®」の本質を理解してもらい、実践できるようにすることがとても重要だと考えているからです。
経営計画も評価制度もつくって終わりではなく、運用を通じて、組織とともに変化・進化していくものだと思っているので、日本人事経営研究室さんには、今後発生する様々な経営課題の解決に向けて、きめ細やかな対応で伴走・サポートしていただくことを期待しています。
事業としては、5年前に事業計画で定めた新規事業(アフター部門、樹木葬事業)のチャレンジを実際にスタートすることができました。今までは葬儀を担当させていただき、満足してもらうことが顧客への価値提供であると考えていましたが、私たちがサービスの領域を広げることで、顧客の生の声と向き合いながら、社会が抱える課題を解決していけるという実感が高まっています。今後は、50年の葬儀事業で培った信頼と実績を基盤に、顧客の生涯価値の最大化に向けて、地域社会の課題に対応していけるサービスを確立し、「地域の皆様にとってなくてはならない企業」を目指していきます。
また、日本の葬儀等の仏事に対する価値観の多様化に応じた新しい価値と市場の創造に挑戦し、業界全体の発展に貢献していきます。そして、理念を軸とした組織運営を継続し、社員とともに豊かな未来を創造していくことを追求していきたいと思います。