中小企業の生産性向上の取り組み方、仕組みづくりを解説|人事評価制度・賃金制度のノウハウ | 日本人事コラム

中小企業の生産性向上の取り組み方、仕組みづくりを解説

生産性の向上の取り組みは、企業にとって必要不可欠です。近年ではリモートワークなど新しい働き方を導入している企業が増えていますし、人材不足に悩んでいる企業も多いでしょう。この記事では、とくに生産性の低さが課題となる中小企業が取り組むべき、“本当の生産性”向上の仕組みづくりについて解説します。

生産性(労働生産性)の定義とは?

まずは生産性という言葉の定義を明確にしておきましょう。

生産性とは、ヨーロッパ生産性本部(EPA)によると「生産諸要素の有効利用の度合い」と定義されています。この定義を元として、公益財団法人日本生産性本部では「生産性とは、あるモノを作るにあたり、生産諸要素がどれだけ効果的に使われたかを、割合で示したもの」と説明しています。つまり、労働者1人あたりの労働生産性に絞れば、「労働者数を分母に、生産量を分子に当てはめて計算した割合」が生産性です。

もう少し噛み砕いて説明すると、同じ労働量、労働者数でより多くの生産物を作り出した場合は、「生産性が高い」ということになります。あるいは、より少ない労働量、労働者数で、それまでと同じ生産物を作り出した場合は、「生産性がアップした」と表現されます。

生産性は大きく分けると「物的生産性」と「付加価値生産性」があり、それぞれ「労働生産性(1人当たり)」「労働生産性(1時間当たり)」「資本生産性」「全要素生産性」の要素で計算を行います。生産性の計算式について詳しくは、下記のページをご参照ください。

参考:公益財団法人日本生産性本部

なぜ生産性向上の取り組みが必要なのか?中小企業が抱える生産性の課題

そもそも中小企業は大企業と比べると生産性が低いと言われています。これは具体的な数字を見ても明らかです。

2018年時点での従業員一人当たりの労働生産性(年間平均)は、大企業は1,323万円、中小企業は553万円となっています。その差は実に2.4倍です。
参考:2018年版「中小企業白書」より

中小企業は大企業に比べて生産性が乏しいために、人件費を上げたくても上げられず、優秀な人材獲得につながらない現状があります。また、給与が上がる見込みがなければ、今いるスタッフのモチベーションも上がりませんから、離職の遠からぬ原因にもなってしまうでしょう。

生産性が低いために人材確保と人材育成がままならなければ、会社は成長していきません。もちろん大企業と中小企業では環境も資金も異なります。しかし、限られた人材で状況を打開するには、生産性の課題に真剣に取り組む必要があります。

組織の生産性を上げる最大の目的

組織の生産性を上げる最大の目的は、全てのスタッフが豊かになることです。ここを間違ってしまうと、ニセの生産性の罠に取り込まれ、かけがえのないスタッフを失うことにつながりかねません。

ニセの生産性の罠とは、「とにかく残業させなければよい」「無駄な休憩時間を与えず、フル回転してもらえばよい」という考え方から、スタッフに過度な負担を強いてしまうことです。そのような考えでは、見かけ上の生産性は少し向上したとしても、スタッフは疲労してしまい、会社を離れていくでしょう。

“本当の生産性”の向上の取り組みは、自分で生産性を意識して動ける優秀なスタッフあってこそです。そのためには、生産性向上の最大の目的である「みんなが豊かになる」ということを、全スタッフで共有する必要があります。

そう、「会社のための生産性向上」ではなく、「みんなのための、そしてほかならぬ自分の成長と豊かさのための生産性向上」であると自覚できるスタッフを育てることこそが、最優先事項なのです。生産性向上に取り組むことで自らが成長できる、より豊かになれると考えることができれば、スタッフは率先して動くようになり、生産性向上のためのアイディアも生まれやすくなるでしょう。

中小企業の”本当の生産性”向上の取り組み方・仕組みづくり

中小企業の“本当の生産性“向上のためには、スタッフに「生産性の向上が自分の豊かさにつながる」という意識を徹底させる仕組みづくりが必要不可欠です。つまり、生産性を向上させるには、まずは人材育成の仕組みづくりに取り組まなければなりません。

社員が高い成長意欲を持ち、ベクトルを合わせて本気で取り組んでいけば、社員自身のためにも、顧客のためにもなります。ひいては会社の成長、生産性向上につながっていくのです。

人材育成の仕組みづくりには、いくつかのステップがあります。弊社が提案している「ビジョン実現型人事評価制度®」では、次のような手順を踏みます。

  • ステージ1:「経営計画」を策定する
  • ステージ2:「評価制度」を構築する
  • ステージ3:「評価制度」を運用する
  • ステージ4:「経営計画」を運用する
  • ステージ5:「賃金制度」を設計する

ステージ5まで終われば、全体を連動させて運用していきます。これが、中小企業の人材を高生産性へと駆り立てる「人事評価制度」づくりの5つのステージです。

まず「経営計画」で、「経営理念」や将来の「ビジョン」を示し、実現に向けた「事業計画」や「戦略」を明確にします。これに沿って社員一人ひとりの役割を落とし込んだ「評価基準」を作成し、運用することで会社が求める人材づくりを行なうことができます。

また、リーダーが中心となって目標達成に向けた戦略を推進することで、会社の戦略推進をまかせられるリーダーが育ちます。その成果と成長の結果を、賃金に結びつけるのです。

詳しくは、以下の過去記事で解説しています。ぜひ参考にしてください。

ビジョン実現型人事評価制度®・経営計画書の作り方総まとめ

おわりに

数字ばかりを追い続け、「今月は、先月よりも生産性がアップした!」と喜んでいるなら、要注意です。数字だけでなく、ぜひ一緒に働いている部下の顔も見てください。疲弊しきった表情をしていませんか?そのままでは、きっと優秀な人から辞めていきます。

とはいえ、リモートワークの導入が進み、スタッフの顔を見ながら仕事をすることができにくくなっているのも事実です。みんなが一つの方向を向いて働けるよう、そして生産性の向上を「豊かさに一歩近づいた」と全社員がともに喜べるよう、人事評価制度の仕組みづくりを始めましょう。

この記事を監修した人

代表取締役山元 浩二

経営計画と人事評価制度を連動させた組織成長の仕組みづくりコンサルタント。
10年間を費やし、1,000社以上の経営計画と人事制度を研究。双方を連動させた「ビジョン実現型人事評価制度®」を480社超の運用を通じて開発、オンリーワンのコンサルティングスタイルを確立した。
中小企業の現場を知り尽くしたコンサルティングを展開、 “94.1%”という高い社員納得度を獲得するともにマネジメント層を強化し、多くの支援先の生産性を高め、成長し続ける組織へと導く。その圧倒的な運用実績を頼りに全国の経営者からオファーが殺到している。
自社組織も経営計画にそった成長戦略を描き果敢に挑戦、創業以来19期連続増収を続け、業界の注目を集めている。
著書に「小さな会社は経営計画で人を育てなさい!』(あさ出版)「小さな会社の人を育てる賃金制度のつくり方」(日本実業出版社)などがある。2020年2月14日に15刷のロングセラーを記録した著書の改訂版である「【改訂新版】3ステップでできる!小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方」(あさ出版)を出版。累計14万部を突破し、多くの経営者から注目を集めている。
1966年、福岡県飯塚市生まれ。

個人ブログ:https://jinjiseido.co.jp/blog/

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