営業戦略:新規顧客を獲得するための4つの戦略|人事評価制度・賃金制度のノウハウ | 日本人事コラム

営業戦略:新規顧客を獲得するための4つの戦略

営業戦略:新規顧客を獲得するための4つの戦略

「新規顧客を獲得したいが、どう営業戦略を練ればよいか分からない」と頭を抱えている中小企業の経営者様には、「営業プロセスの標準化」「営業ツールの整備と活用」「販促・プロモーションの推進」「自社デザイン化の推進」の4つの営業戦略をお勧めします。営業の働き方を標準化し、広報を推進すれば、新規顧客の獲得率がぐんとアップするでしょう。

営業戦略1:営業プロセスの標準化

1つ目の営業戦略は「営業プロセスの標準化」です。「標準化」を辞書で引くと、”誰もが共通して使用できる一定の基準を定めること”であると書かれています。

ところが、中小企業の営業は「標準化」とは真逆のやり方になっている場合が非常に多いです。つまり「多様化、複雑化し、無秩序(属人的、営業社員や担当者任せ)で、標準に合わせ、近づけようとしていない」企業が大半ということです。

こうした営業現場の実態を、秩序が保たれた状態にし、標準に近づけることで営業効率が格段に上がり、大きく業績を向上させることができます。事例を挙げて説明しましょう。

営業プロセスの洗い出し、標準プロセスの検討、決定

まず、各営業マンから、それぞれが行っている営業の取り組み方を聞き出します。とくに高い成果を上げている営業マンからは詳しく手順やコミュニケーション方法、活用しているデータや資料まで具体的にヒアリングし、洗い出しましょう。これをもとに自社の「ベスト営業プロセス」を作成します。

次のように、契約までの活動を大きな流れで把握できるようにフローで示すとわかりやすいでしょう。

  • ステップ1:イベント開催
  • ステップ2:アンケート記入
  • ステップ3:お礼状の送付
  • ステップ4:初回面談アポイント
  • ステップ5:初回面談(プラン作成に必要情報の収集、競合状況などの把握)
  • ステップ6:2回目面談(プラン、見積もりの提案)
  • ステップ7:3回目面談(クロージング)
  • ステップ8:契約

プロセスと業務数値との相関関係を把握

営業ステップの標準プロセスを決定したら、推進していく中で、会社側は各ステップに何人の見込客がいるのかを常に見える状態にしておきます。さらに、各ステップの見込客の数と、業績数値との相関関係を導き出しておくことで、全社業績目標達成に効果的な対策を打つことができます。

たとえば「3,000万円の売上目標を達成するためには、見込客全体で300人以上、ステップ6以降の見込客が50人以上必要」など、営業ステップごとの必要数値を具体的に導き出しておきます。こうすることで、不足しているステップの見込客を増やすための対策を的確かつタイムリーに打つことが可能になります。

具体的には、見込客全体の人数を底上げするためにイベントの開催数を増やしたり、ステップ6以降の見込客数の必要数値を満たすまで営業リーダーが部下に同行したりといった対策を打ち出します。ピンポイントで効果的な対策を行うことで、営業活動の効率や人材育成の効果を上げながら、会社の業績を大きく向上させることができるのです。

営業戦略2:営業ツールの整備と活用

営業ツールの整備と活用も営業戦略のひとつです。営業ツールは、営業社員以上に活躍してくれる場合があります。飛び込み訪問を行った会社で担当者に面会するのが難しいとき、ただ名刺を置いて帰るのと、決められた営業ツールを置いてくるのでは、確実に差が出るからです。

あなた自身が飛び込み営業を受けた場合のことを考えてみてください。名刺とクリアフォルダーや封筒に入った営業ツール一式を渡されたら、ひとまずは担当者に渡すのではないでしょうか。もし営業ツールが決裁権限者まで届いた場合、「また営業か」とゴミ箱に投げ入れられることもあるでしょう。しかし、タイミングによってはひととおり目を通してくれる人もいます。関係者に回覧してくれる人もいます。

いずれにせよ、名刺だけでなく営業ツールを先方へ渡したほうが、あなたの会社の存在や商品・サービス、 独自のこだわりや価値を知ってもらえるチャンスは格段に高まります。

営業ツールには、主に以下の5つがあります。1から4までは、作成、活用することで必ず業績に結びつきます。

営業ツール1:会社案内

会社案内は、作成している中小企業も多いかもしれません。しかし、3年以上内容を変えていない、あるいはA4サイズで1〜2ページ、文字だけのものしか作成していないという会社は、ぜひこの機会に刷新してください。A3見開き、A4で表紙を含めて最低8ページ、できれば12〜16ページのボリュームのものを作成しましょう。

会社案内には、代表挨拶、会社概要、沿革、組織図、事業内容、経営計画、基本方針、行動理念を盛りこみます。また、必要に応じて社員の声や活躍状況などを盛りこみましょう。

特に社長挨拶は、社長の思いやこだわりを顧客に伝える一番大事な部分です。また、組織図がない場合は、この機会に、自社のビジョン実現のためにどういった体制が必要かを考えてみてください。

営業ツール2:商品・サービス案内のパンフレット、カタログ

商品パンフレットやカタログは、定期的に最新のものに更新して顧客に届けるようにします。自社をそのたび思い出してもらうことができ、リピート回数アップにつながるからです。

営業ツール3:アプローチブック(新規訪問先での自社プレゼン資料・データ)

アプローチブックは、顧客を訪問し面談の機会を得たときに、自社がどんなお役立ちができるのかを伝えるためのプレゼンツールです。自社の強みや特徴、こだわりを盛りこみ、「○○〇(社名や商品名)が選ばれる5つの理由」「○○〇にしか提供できない5つの価値」といった文言で、要素ごとにわかりやすく伝えます。強みを裏づける内容と根拠も忘れずに加えましょう。

全体でA4サイズ、20ページ前後でまとめ、差し込み式のクリアファイルに入れて完成です。これをアプローチブックと呼びます。営業社員全員と来社する顧客への説明に必要な冊数を準備しておきましょう。

活用方法は、顧客にアプローチブックを順番に開いて見てもらいながら、各ページにある内容を順番に説明していきます。定期的に効果を検証しながら内容をブラッシュアップしていきましょう。

営業ツール4:顧客の成果・体験事例集

顧客の生の声を集めた事例集です。顧客や取引先の担当者本人が直接語っている口調の文章に、写真つきで作成します。「顧客の声」というと、インターネット上の口コミを思い浮かべ、「軽いもの」ととらえる人もいるかもしれませんが、ここでは自社の価値を伝える内容の濃いものを作成します。以下のような構成がよいでしょう。

  • 1. 自社の商品やサービスを選んだ理由、導入に至った経緯
  • 2. 使用、導入時の不安、苦労や障害
  • 3. 効果、成果、実績、喜びの声
  • 4. 今後の自社への期待

小売や仕入販売業では1や2、4の内容に悩む場合もあるかもしれません。しかし、あえてこうした内容を盛り込むことによって、モノとしての商品以外の独自の価値が伝わります。

顧客本人の言葉を伝えるものですから、率直に顧客に聞いてみましょう。自社内では気づかなかった、あなたの会社独自の価値を発見できる機会になるかもしれません。

営業ツール5:顧客への企画・プレゼン資料とその作成フォーム

中小企業では、顧客への提案時に使うプレゼン資料や企画書が、営業担当者によってバラバラというケースがよく見受けられます。これを整理し、共通で活用できるものとすることで、大きく効率化を図れるだけでなく、受注や契約の確率も高まります。もっとも効果が出やすい企画書や営業資料を全員が活用するからです。

また、これらのツールが統一されることで、リーダーの指導が行いやすくなり、社員教育にも活用できます。

営業戦略3:広告・プロモーションの推進

3つ目の営業戦略は「広告・プロモーションの推進」です。

企業がある一定の規模までは、社長の人脈や関係先の紹介に頼った方法でも顧客を増やし、売上を上げ続けることができるでしょう。しかし、それだけではいずれ成長に限界が訪れます。こうして売上の伸びが鈍化した中小企業も、広告・宣伝をプラスすることで新規客の獲得ペースをアップさせ、再び成長軌道に乗せることができます。

これまでも、ポスティングや新聞広告などでプロモーションを続けてきた企業はあることでしょう。しかし、戦略に基づいて計画的に広告を推進することで、費用対効果を高めることができます。成果を得るためのポイントは、以下の3つです。

  • 1. 年間予算を決める
  • 2. 効果測定をきちんと行う
  • 3. 担当者と役割をきちんと決める

広告・プロモーションは新規顧客を獲得するための投資です。投資とは、今よりも大きな利益を得るためにお金を使うということです。「宣伝・広告費を使っていない」ことは、中小企業の伸びが頭打ちになってしまう大きな要因の1つです。

事業計画を考える上で予算を決め、費用に対してどの程度リターンがあったかを数値で把握することで効果測定し、しっかり担当者を決めて、うまく推進していきましょう。

営業戦略4:自社デザイン化の推進

「自社デザイン化」は、ロゴマークやキャッチコピー、コーポレートカラーなどを制作し、ルールを決めて活用していくことで自社の価値を高めていくための営業戦略です。デザイン化は、企業の認知度を高め、イメージを作り信頼を高め、社員の意識向上やモチベーションアップにも役立ちます。

ロゴのデザインやカラー、それとセットになったメッセージは、企業のイメージを形づくります。「カラダにピース。カルピス」「あったらいいなをカタチにする 小林製薬」「子どもたちに誇れるしごとを。清水建設」などは、社名や商品名とデザインされたメッセージを一緒に発信している事例です。

こうして、会社の理念や使命にもつながるメッセージを、デザイン性を持って伝えることで「きちんとした会社」「しっかりした会社」だという安心感や信頼につながる印象を持ってもらうことができます。また、自社のロゴやデザインを決め、意味や目的を全社員と共有し、名刺に印刷するなどして使っていくことで、社員の意識向上による帰属意識や組織力をアップさせることにもつながります。

自社デザイン化を推進するためには、以下の6つを制作します。しっかり取り組めば、自社の一貫性やブレない姿勢を顧客や社会に伝えることができます。

自社デザイン化1:社名デザインとロゴマーク

社名の文字をオリジナルフォントで制作し、文字の色も決めます。社名とセットでロゴも制作した方が効果は高まるでしょう。決定したら、社名の入ったものすべてに使用します。

自社デザイン化2:コーポレートカラー

1の社名デザインと一緒に考えます。社名の色、ロゴマークの色の他に、会社パンフレットやプレゼン資料などで使用する色を、4〜5色決めておくとよいでしょう。

自社デザイン化3:キャラクター

会社、もしくは商品・サービスのイメージキャラクターを決めておくと、顧客に親しみを持ってもらえ、より印象に残りやすくなります。

自社デザイン化4:キャッチコピー

ひとことで自社のこだわりや社会的な使命を表す言葉です。経営理念や基本方針で掲げた文章の中から作成するとよいでしょう。社会貢献度の高い言葉を選ぶのがポイントです。

自社デザイン化5:ネーミング

「ネーミング」とは商品やサービスに対する名称のことです。たとえば、弊社は独自の「経営計画」「人事評価制度」に「ビジョン実現型人事評価制度®」という名称をつけています。

自社の商品やサービスに名前をつけることで、その独自性やオリジナリティーをアピールすることができます。建設会社であれば建築物や工法、製造業なら自社の製品、サービス業でも独自の商品やサービスを考案し名称をつけると、顧客への印象と価値を高めることができます。

なお、オリジナルのネーミングは、商標をとっておくことをお勧めします。もちろん、「ビジョン実現型人事評価制度®」も商標登録をしています。そして、あらゆる場面で「®(Rマーク)」をセットで表示してください。

自社デザイン化6:資料作成時のルール

会社案内、商品パンフレット、プレゼン資料など、社外に出す資料については、色やレイアウト、ヘッダーやフッターをどんなデザインにするかを決めておくことで、統制がとれているという印象を顧客に与えることができます。

おわりに

営業プロセスを定め、営業ツールを整備すれば、営業社員の成長スピードがアップし、各ステップでの課題が浮き彫りになることでどんな指導をすればよいかがわかり、営業リーダーの育成力も向上します。また、会社全体の営業状況を把握でき、業績向上のための対策が的確に打てることにつながります。

また、企業のデザイン化により個性をしっかり打ち出すことで顧客にインパクトを与え、社員に愛着心を植え付けることが可能になります。営業戦略が、そのまま人材育成戦略になるのです。まずはできることから取り組み、継続的な改善を重ねることで、長期的な成長につなげていきましょう。

本記事で解説した4つの営業戦略は、拙著『【改訂新版】図解 小さな会社は経営計画で人を育てなさい!』にて、中小企業の業績向上につながる”20の戦略ラインナップ”と共に図解付きでより詳しく解説しています。
実際に、戦略を推進・実行して成果を出すためには、組織の仕組みづくりと運用方法を知ることが大切です。拙著ではそれをしっかり学んでいただけます。ぜひ手にとってお読みください。

【改訂新版】図解 小さな会社は経営計画で人を育てなさい!
【改訂新版】図解 小さな会社は経営計画で人を育てなさい

拙著に掲載しているその他の戦略は別記事で解説しています。

この記事を監修した人

代表取締役山元 浩二

経営計画と人事評価制度を連動させた組織成長の仕組みづくりコンサルタント。
10年間を費やし、1,000社以上の経営計画と人事制度を研究。双方を連動させた「ビジョン実現型人事評価制度®」を480社超の運用を通じて開発、オンリーワンのコンサルティングスタイルを確立した。
中小企業の現場を知り尽くしたコンサルティングを展開、 “94.1%”という高い社員納得度を獲得するともにマネジメント層を強化し、多くの支援先の生産性を高め、成長し続ける組織へと導く。その圧倒的な運用実績を頼りに全国の経営者からオファーが殺到している。
自社組織も経営計画にそった成長戦略を描き果敢に挑戦、創業以来19期連続増収を続け、業界の注目を集めている。
著書に「小さな会社は経営計画で人を育てなさい!』(あさ出版)「小さな会社の人を育てる賃金制度のつくり方」(日本実業出版社)などがある。2020年2月14日に15刷のロングセラーを記録した著書の改訂版である「【改訂新版】3ステップでできる!小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方」(あさ出版)を出版。累計20万部を突破し、多くの経営者から注目を集めている。
1966年、福岡県飯塚市生まれ。

個人ブログ:https://jinjiseido.co.jp/blog/

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