組織戦略:組織の推進力を強める2つの戦略
組織が持続的に成長していくためには、目標達成へ向けた「推進力」が欠かせません。しかし、その推進力は自然に生まれるものではなく、意識して強化する必要があります。
この記事では、組織全体が同じベクトルを向いて働いていくための「会議・社内コミュニケーションの仕組みづくり」と「マニュアル・手順書の整備・活用」という2つの戦略を解説します。これらを適切に運用することで、組織の連携を深め、業務を効率化させて推進力を高めていきましょう。
組織戦略1:会議・社内コミュニケーションの仕組みづくり
会議がまったく行われない、という会社は少ないでしょう。しかし、その目的や内容があいまいなまま実施している組織が多く、非常にもったいない現状といえます。そこで、社内の会議とコミュニケーションのルールづくりを行います。
ルールづくりによって、社員のベクトルが揃い、意思決定のスピードが増し、情報の共有とかつよう促進が叶います。これらの効果で、組織の推進力を強め、目標達成力やビジョンの実現度を高めましょう。
会議について明確にすべき事項
各会議については、次の事項を明確にしてください。
- 会議の名称
- 会議の開催頻度
- 会議の開催日時、曜日
- 会議を行う目的
- 検討事項、内容
- 参加者
なお、議事録の書式とその保存方法や場所も決めておきます。
「社内コミュニケーション」を計画的に行う
本戦略では、社員同士で集まる情報共有や伝達を目的とした場を、「社内コミュニケーション」として計画的に行います。たとえば、社長と幹部社員のミーティング、部門メンバー同士での懇親会、全社の忘年会などです。
こうしたちょっとしたミーティングや飲み会は、あらかじめ日時などを決めずに必要に応じて行っているという中小企業も多いでしょう。しかし、これらを計画的に実施することで、組織のベクトルをそろえ、仕事のやりがいを醸成する場として有効に機能させることが可能になります。
会議・社内コミュニケーションの仕組みの運用方法
会議に関しては、下記のような「会議開催要領」を作成し、会議・社内コミュニケーションの実施予定を年間スケジュールとして全社員に公開します。毎年期末に次期のスケジュールを作成し、経営計画発表会で公開するという仕組みにしておきます。
このスケジュールは、クラウドシステムなどを活用し、ウェブ上でいつでも全社員が共有できる状態としておきましょう。会議・社内コミュニケーションの場は、理念・ビジョンに向けて全社員のベクトルを合わせるための重要な時間ですから、各会議・社内の参加者が、実際参加したかどうかをチェックするのも大事です。
会議・社内コミュニケーション開催要項 |
経営計画発表会(4月第1金曜日 14:00〜) | |
項目 | 内容 |
経営目標の発表 | ・10カ年事業計画 ・今期売上、粗利目標 |
理念共有 | ・理念浸透、実施報告 ・重点行動理念の発表 |
戦略とアクションプランの発表 | ・理念テストの実施 ・戦略、アクションプラン発表 ・実行計画推進スケジュール発表 |
下記キックオフ(10月第1金曜日 14:00〜) | |
項目 | 内容 |
上記実績状況 | ・上記の振り返り ・達成、未達成要因の確認 ・下期実行、改革次項確認 |
理念共有 | ・理念実践事例発表 ・社長により理念に関わる訓示 |
アクションプラン会議(毎月第1金曜日 16:00〜) | |
項目 | 内容 |
アクションプラン報告 | ・アクションプラン取組、進捗状況の報告 ・成果指標の達成度確認 |
課題・改善点共有 | ・課題と対策の確認、スケジュール調整 ・他部署への共有 |
情報共有 | ・共有情報の確認 |
アクションプラン部門ミーティング(毎月第2月曜日 9:30〜) | |
項目 | 内容 |
アクションプラン進捗確認 | ・担当アクションプランの取組、進捗状況の報告 |
個人アクションプラン報告 | ・個人アクションプランの成果、課題の共有 |
朝礼(毎日 9:00〜) | |
項目 | 内容 |
朝礼 | ・理念の唱和 ・スケジュールと今日の目標発表 ・来客予定確認 ・その他の連絡事項 |
組織戦略2:マニュアル・手順書の整備・活用
社長が、新たな改革や事業に取り組もうとすると、「忙しくてそんな余裕はない」「ただでさえ、高い目標を達成しなければならないのにやってられない」といった声がリーダーから漏れてくる中小企業も少なくありません。この要因は、組織のルーティン化が進んでいないことにあります。
中小企業では、一人の技術者が一手に商品開発を担っている、事務や経理の業務手順が担当者にしか分からないなど、「人」に仕事がついている場合が非常に多いものです。こうした属人的な仕事の進め方を、マニュアルや手順書を活用して人材育成を行いながら、誰でも標準以上の仕事が行える状態としていくことができます。これがルーティン化です。
ルーティン化を推進することで、新たな仕事に取り組むための余裕ができていきます。
マニュアル・手順書の作成ポイント
マニュアル・手順書作成のポイントは2つあります。「作成する順序」と「フォーマット」です。
マニュアル・手順書の目的は、一人しかできない仕事、あるいは行う人によってやり方がバラバラな仕事やノウハウを統一化、あるいは共有し、関わる人すべてが標準レベル以上のレベルでできるようにすることです。マニュアル化の効果が大きい仕事から優先して作成を進めるスケジュールを立てましょう。
また、マニュアル・手順書作成に取りかかる前に目次を作成し、フォーマットをしっかり決めましょう。これによって、仕事の分類やその階層レベルを統一することが可能になり、活用しやすく成果につながるマニュアルが誕生します。
マニュアル・手順書への取り組み方
マニュアル・手順書で余裕のある組織を作るため、本戦略の取り組み方で徹底していただきたい点が2つあります。1つは、会社の中で、常にマニュアル・手順書の作成が推進されている状態にすることです。もう1つは、作成後は改善を継続的に行うことです。
中小企業では、マニュアル・手順化できる仕事は多岐にわたりますし、新たな仕事やプロジェクトが導入されたときには必ずマニュアル・手順書を作成する機会が発生します。また、マニュアルや手順書は実際現場で使ってみると、マニュアル・手順書どおりに仕事を進めることができない人が出てきたり、新たな気づきが出てきたりします。
マニュアルや手順書を加筆し、改善し続けることで、得られる成果は確実に大きくなります。ぜひ継続的に取り組んでください。
おわりに
組織の推進力を強めるには、明確な仕組みづくりが不可欠です。会議や社内コミュニケーションを定例化し、情報共有を円滑にして意思決定のスピードを向上していきましょう。また、マニュアル・手順書を活用し、業務の標準化を図ることで、新たなチャレンジが可能になります。
なおこれらの施策は、継続的に改善を加えながら、自社に最適な形に仕上げていくことが大事です。仕組みをブラッシュアップしながら、より成長できる組織づくりを行いましょう。
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拙著に掲載しているその他の戦略は別記事で解説しています。