伸びる会社は社員の処遇(報酬)のメリハリをつけている!業績を伸ばす賃金制度の作り方
業績のいい会社と、ウチの会社とでは、何がどう違うのだろう?そう疑問に思っている経営者の方はいませんか。ヒントは、賃金制度の中にあります。メリハリをつけた報酬体系で業績を伸ばし、赤字会社から脱出しましょう!
伸びている会社の特徴
伸びている会社には、共通点が2つあります。1つは、給与体系にメリハリがある点。もう1つは、高給の人には相場よりもかなり高い報酬を与えている点です。当社の顧客の9割以上が黒字会社であることから、社員の処遇の仕方に注目して相場と比較してみたところ、この結論にたどり着きました。
具体的な年収でいえば、一般社員には300万円前後の報酬を与える一方で、リーダークラスには600万円から1,000万円ほどを与えています。賞与についても、平均的な貢献度の社員には20万円から30万円がせいぜいですが、貢献度の高いリーダーには100万円を超える賞与を支給する会社が、成長企業に多いのです。
一方、業績が芳しくない中小企業を見てみると、社長以外の年収は250万円からせいぜい400万円程度、賞与は10万円から30万円というケースがほとんどです。より成果を出して会社に貢献した人材や、貢献が期待できる人材に大きく配分することが、優秀な人材を呼び、かつ育てるのでしょう。それは会社の業績向上につながっていきます。
- 給与体系にメリハリがある
- 高給の人には相場よりもかなり高い報酬を与えている
まず「経営計画」と「評価制度」の仕組みを作る
成長し続ける会社にするには、まず「経営計画」と「評価制度」の仕組みを作りましょう。それらの運用体制が整ってから「賃金制度」にメスを入れていきます。なぜなら、評価者であるリーダーが部下の貢献度を適正に評価し、会社が求める人材像に向けた育成ができる仕組みが整っていなければ、「賃金制度」を効果的に運用できないからです。
具体的には、まず「経営計画」を作成して会社の将来像とそのプロセスを明確にします。次に、「経営計画」に沿って社員一人ひとりの役割を落とし込んだ「評価基準」を作成し、運用していきます。この仕組みにより、会社が求める人材づくりを行なえるようになるのです。
また、リーダーが中心となって目標達成に向けた戦略を推進することで、会社の戦略推進をまかせられるリーダーが育ちます。その成果と成長の結果を、「賃金」に結びつけるのです。
この一連の仕組みを、弊社では「ビジョン実現型人事評価制度®」と呼んでいます。「ビジョン実現型人事評価制度®」の作り方と運用のポイントは以下の記事にまとめていますので、「賃金制度」の改革に取り組む前にご覧ください。
ビジョン実現型人事評価制度®・経営計画書の作り方総まとめ理想の人材を育てる!人事評価制度を定着させるための5つの運用プロセス
業績を伸ばす賃金制度の作り方
ここからは、「経営計画」と「評価制度」の運用体制が整っていることを前提に、業績を伸ばす「賃金制度」の作り方をご説明します。
具体的な方法は2つです。1つは、貢献度に応じて報酬のメリハリをつけることです。もう一つは、「本給」と「仕事給」の比率をきちんと決めることです。
順に解説しましょう。
貢献度に応じて報酬のメリハリをつける
まずは、会社の貢献度に応じて報酬のメリハリをつけましょう。賃金制度は、単に給与を決めるためだけのシステムではありません。賃金制度の本当の役割は、「貢献度」と「成長度」を見える化することです。
社員の賃金を上げることがモチベーションのアップにつながると考える経営者もいるでしょう。しかし、一律に賃金を上げたところで、社員の気持ちが根本から揺り動かされることはありません。やる気がアップしたとしても、それは一時的な効果です。
社員が業績を上げるよう自ら動き、かつその動きを持続させるためには、「会社にどれほど貢献したか」「どれだけ成長することができたか」が具体的に見えなければなりません。そのためには、納得度の高い「評価制度」を設計し、かつ粘り強く運用していくことが大事です。優秀なリーダーの「高い賃金」は、本人も評価者も納得する「高い評価」が土台にあってこそ意味を成します。
「本給」と 「仕事給」の比率の決め方
基本給における「本給」と「仕事給」の比率を決めれば、仕事の貢献度や成長度によって賃金にメリハリをつけることができます。勤続給的な性格を持つ「本給」と、評価結果に基づいた仕事の貢献度で決まる「仕事給」のウェイトを操作することで、どちらに重点を置いた賃金体系なのかを示せるでしょう。
以下、3つのパターンで考えてみます。
【A】本給:仕事給 7:3
【B】本給:仕事給 5:5
【C】本給:仕事給 3:7
Aの場合、勤続給的な意味合いを重視することで、会社としては評価をダイレクトに反映するウェイトは比較的小さくしたいことが、社員に伝わります。
Bの場合、基本給の半分は仕事の貢献度が反映されるという会社の考え方がみてとれます。
Cの場合は、仕事の貢献度が基本給に大きく影響するというメッセージになります。
弊社がコンサルティングで導入する場合、本給と仕事給の比率は5:5で導入するパターンが一番多いです。この比率でおおよそメリハリがつくことになりますが、仕事給の比率は、会社の組織風土やこれまでの賃金の運用方法を踏まえて慎重に決めましょう。
社員は給与が下がることに敏感です。急に仕事給の比率を大きくしすぎると、給与を下げるための賃金制度ではないかという誤解を持たれかねません。ただ、成長意欲が希薄すぎると感じていて、雰囲気を一気に刷新したいなら、あえて仕事給のウェイトを大きくし、危機意識を社員に持ってもらう場合もあります。
メリハリをつけた処遇で好循環を生み出す
2020年4月から、「同一労働同一賃金」が施行されます(中小企業は2021年4月から義務化)。
※同一企業で同じ業務において、雇用形態(正規社員・非正規社員)による不合理な待遇差の解消をするための制度
中小企業の中には、「少なくとも正社員には、これまで公正に賃金を与えてきた」という経営者もいることでしょう。しかし、単に「会社で働いてくれている人には同じ給与を」という考え方では、真の同一労働同一賃金とはいえません。どんなに頑張っても他の人と同じ給与しかもらえないのでは、貢献度の高い社員や成長著しい社員は「正当な評価がされていない」と不満を抱えてしまうでしょう。
賃金の不満を解消して業績を伸ばすには、仕事の量、質、責任、ポテンシャルなどを総合的に捉え、メリハリをつけた処遇を行うことで社員のモチベーションを高める仕組みづくりが必要です。上述した賃金制度の運用がうまく機能すれば、業績アップの好循環が生まれるでしょう。
おわりに
業績が伸び悩んでいる、社員のやる気が低下していると感じたら、ただ一律で賃金を引き上げるのではなく、メリハリを効かせた賃金制度の導入を検討しましょう。結果を出すことのできるリーダーに高い報酬を与えれば、会社全体の覇気に好影響が現れます。
繰り返しになりますが、まず「経営計画」と「評価制度」の仕組みを整えたうえで、「賃金制度」の改革を進めましょう。そして、人事評価制度はただつくるだけでなく、適切に運用するのが大切です。導入時は受け入れられない社員から抵抗があるかもしれません。しかし、本当に社員のためになる評価制度なら、いずれ受け入れてもらえるものです。そう信じて、調整を続けながら粘り強く運用しましょう。