人事評価制度がない会社とある会社では業績や賃上げ率に大きな差がある

これからの中小企業経営においては、人事評価制度は単なる「人事上の仕組み」ではなく、業績や社員定着率を左右する重要な要素になります。本記事では、「人事評価制度の有無による中小企業の格差調査」を参考にし、調査結果から見える人事評価制度の大切さについて考えます。
目次
人事評価制度の有無は業績や賃上げ率に大きく影響する
日本人事経営研究室株式会社は、全国の中小企業で「人事評価制度を運用している」経営者および役員100名と、全国の中小企業で「人事評価制度を運用していない」経営者および役員100名を対象に、人事評価制度の運用状況とそれによる企業への影響について調査しました。
調査結果を見てみると、人事評価制度を導入している企業は賃上げを実施する割合が高く、業績も安定している傾向が確認されました。一方、人事評価制度を導入していない企業では、賃上げが難しい、業績が伸び悩むといった課題が浮き彫りになっています。
調査結果の詳細は以下のページでご覧いただけます。
【人事評価制度の有無による中小企業の格差調査】人事評価制度を運用している企業は92%が賃上げを実施、運用していない企業は44%と大きな差「人事評価制度あり」は業績向上につながった企業も半数以上に
人事評価制度の有無による中小企業の格差調査
調査では、人事評価制度のある会社、ない会社それぞれに対して「賃上げ」「業績」「評価」「離職原因」「社員のモチベーション」「社員の育成」などについて回答してもらっています。具体的な調査結果は、以下のとおりです。
人事評価制度の有無が賃上げの実施に影響
調査ではまず、「あなたの会社では直近1年で賃上げを実施しましたか?」という質問をしました。人事評価制度を運用している中小企業では実に92.0%が賃上げを実施したと回答。一方で、人事評価制度を運用していない中小企業では賃上げを実施した割合は44.0%にとどまり、大きな差が生じています。
人事評価制度の有無が業績に影響
次に、「あなたの会社の業績はこの1年~2年で向上していますか?」という質問をしました。人事評価制度を運用している中小企業では53.0%が「向上している」と回答。一方で、人事評価制度を運用していない中小企業では26.0%にとどまっています。この結果から、人事評価制度の有無が業績に影響する可能性が高いと推測できます。
人事評価制度の有無で社員に対する評価に差が出る
「自分の会社は社員に対する評価が適正に行われている会社だと感じますか?」という質問もしてみました。人事評価制度を運用している中小企業は「適正と感じている」が90.0%なのに対し、人事評価制度を運用していない中小企業は53.0%でした。制度の有無が従業員のモチベーションに影響する可能性も否定できません。
人事評価制度の有無と社員の離職原因の認識の関係
「あなたの会社での社員の離職原因は何だと思いますか?」という質問に対し、人事評価制度のある会社では「職場環境」や「給与や待遇への不満」といった明確な原因が多くを占めています。一方、人事評価制度のない企業では離職原因を「わからない」と回答した割合が44.0%で、最多の結果となりました。この結果からは、経営層と従業員のコミュニケーション不足が離職の要因となっている可能性が示唆されます。
人事評価制度が社員のモチベーション向上に貢献
人事評価制度を運用している企業の経営層に「人事評価制度を運用していることによる効果をどのように感じていますか?」と質問したところ、「従業員のモチベーションが向上した」が45.0%と最も多く、次いで「昇進・昇格の実施がスムーズになった」が37.0%、「賃上げができた」が36.0%という結果となりました。人事評価制度が社員のモチベーション向上に貢献していると実感している企業が多いようです。
人事評価制度の有無が社員の目標意識に影響
「あなたの会社の社員は目標を持ち、成果を出すことを意識して働いていると感じますか?」と尋ねたところ、「とても感じる」「少し感じる」と答えた割合を合わせると、人事評価制度を運用している中小企業では83.0%、運用していない中小企業では60.0%となりました。人事評価制度の有無が、社員の目標意識にも影響していることが分かります。
人事評価制度の有無が社員の育成に影響
「あなたの会社では社員の育成が十分にできていると感じますか?」という質問に対しては、「とても感じる」「少し感じる」と答えた割合を合わせると、人事評価制度を運用している中小企業では75.0%なのに対し、運用していない中小企業では52.0%となりました。人事評価制度は、社員の育成にも効果的であると示す結果になっています。
人事評価制度を導入しない理由は「効果を感じにくいから」
人事評価制度を導入していない中小企業に、導入しない理由を尋ねたところ、最も多かったのは「導入しても効果を感じにくいから」が28.0%、次いで「他の優先事項があるから」が25.0%という結果でした。「人事評価制度のノウハウを持っていないから」も、22.0%という結果になっています。人事評価制度は導入するだけでなく、正しく、時間をかけて運用してこそ効果が発揮されます。しかしそれができなかったために、効果を感じにくいという回答が多かったのではないかと考えられます。
アンケートの結果から見える「人事評価制度導入企業」と「未導入企業」の違い
今回の調査から明らかになったのは、人事評価制度の有無が中小企業の経営に多面的な影響を及ぼしているという点です。
まず、賃上げの実施率に関しては、人事評価制度を導入している企業の方が明らかに高く、社員にとって「努力が報われる」という納得感や、目標意識の向上につながっていると考えられます。
一方、人事評価制度がない企業では、賃上げの判断が不透明になりやすく、社員の不満や不公平感を生みやすい傾向がうかがえます。「評価が適正に行われていない」という不信感は、上司と部下とのコミュニケーションの亀裂を生じさせる要因にもなり得るでしょう。結果、「原因がわからないまま社員が辞めてしまう」という事態につながっていると思われます。
また、業績面での違いも明らかでした。人事評価制度を持つ企業は社員の目標設定や成果管理をしっかり行っているため、組織全体の方向性が揃いやすく、結果として業績向上につながっていると思われます。社員の働きを適正に評価することが会社にとってプラスになると示す調査結果となっています。
一方、制度がない企業では、評価が属人的になりやすく、社員の方向性がバラバラになってしまう結果、努力が十分に成果に結びつかず、業績向上につながりにくいという状況に陥っているのではないでしょうか。社員の努力を業績に結びつけるには、社員の目標、ベクトルを揃えることが必要です。その役割を担うのが人事評価制度なのです。
中小企業の業績向上には人事評価制度と経営計画の導入・運用が必要
調査結果では、人事評価制度を導入しない理由として「導入しても効果を感じにくい」という声が多く挙がりましたが、これは「経営計画」と連動した運用がなされていないことに起因します。
人事評価制度だけでなく経営計画も運用しているか聞いたところ、人事評価制度を運用している中小企業の82.0%が経営計画も運用していました。一方で、人事評価制度のない中小企業で経営計画を運用している割合は30.0%と低い結果になっています。
なお、経営計画を運用することによる効果を聞いたところ、「従業員の仕事に対する目標意識が向上した」が41.4%、「会社全体の方向性が明確になり、従業員の意思疎通ができた」が32.3%、「業績が伸びた」が29.3%と、経営計画が社員育成にも業績アップにも貢献していることが分かります。
これらの調査結果からわかるように、中小企業こそ、「経営計画」で会社のビジョン(将来像)を示し、「人事評価制度」でそこに至るための社員の具体的な行動とキャリアパスを示すべきです。「経営計画」と「人事評価制度」がそろって初めて、評価への納得感が高まり、人材育成が進み、結果として業績が向上し、賃上げが可能になります。
弊社では、経営計画と人事評価制度を連動させた仕組みとして「ビジョン実現型人事評価制度®」を推奨しています。詳しい作成方法は以下の記事に掲載していますので、ぜひ参考にしてください。
なお、「ウェブ記事ではなく本でじっくり読みたい」「記事を読んだ上で、ぜひ具体的に運用してみたい」と感じたら、山元の著書『【改訂新版】図解 小さな会社は経営計画で人を育てなさい!』を参考にしてください。増刷10刷に達したベストセラー『小さな会社は経営計画で人を育てなさい!』の改訂新版です。



































