成果に差が出る! 戦略で企業を成長させる3つのPDCA
せっかく企業戦略を打ち立てたのに、うまく実行に結びつかないと悩んでいるなら、PDCAをまわすことに注力しましょう。成果に対し80%の影響を与える戦略実行の手順とポイントを解説します。
3つのPDCAで戦略を成果に導く
企業戦略は、3つのPDCAをまわすことで継続した成果を得られます。「アクションプラン」「個人アクションプラン」「評価制度」の3つです。
「アクションプラン」のPDCAとは、自社の戦略を直接推進していくためのPDCAです。ここが回り続けていないと、本来会社が目指すべき目標は達成できません。
「個人アクションプラン」のPDCAとは、会社の戦略から社員個々人に落とし込まれた役割や課題を回すPDCAです。社員それぞれがやるべきことを理解し、反省を踏まえながら業務を改善していきます。
「評価制度」のPDCAとは、戦略を実行、成果を期待できる人材を育成するためのPDCAです。戦略を評価制度に落とし込んで運用すれば、成果へとまっすぐに繋がっていきます。
戦略で成果を上げるカギとなるPDCAの基本
本題に入る前に、PDCAの基本プロセスについて解説します。すでにご存じの方は、読み飛ばしていただいて構いません。
PDCAは、「PLAN(計画)」「DO(実行)」「CHECK(検証・評価)」「ACTION(改善・対策)」の4つのプロセスを通じて業務の質を高めることです。ただし、組織全体で成果につなげるためには、もっと深く理解しなければなりません。
PDCAは学習のサイクルです。PDCAを通じて社員全員の学習を促進し、成長することで人材力の強化を図ることができます。そして最終的には、組織のあちこちであらゆる業務のPDCAが回り続けている状態を目指します。
こうした状態まで持っていくことができれば、あなたの会社は「学習する組織」になります。PDCAを通じて自動的に全社員が成長し、さまざまな業務の質が高まります。そのために重要なのが、「進め方」と「業務上の言葉」を全社員で共有することです。
PDCAの進め方
PDCAの進め方を言葉で表すと、次の通りになります。
よく考えて実行計画を組み立て(PLAN)
しっかり実行し(DO)
結果を検証して(CHECK)
それをもとに新しいものを加えてさらに高い精度を目指して実行する(ACTION)
ここまで来て初めて「PDCAのサイクルを1回まわした」ことになります。
PDCAにおける業務上の言葉
PDCAのそれぞれに該当する言葉は、以下のようになります。
- (P)実行計画、企画、活動計画、プラン、プランニング、施策、新しい試み、仮説 など
- (D)実施、実行、実践、行う、推進、取り組む など
- (C)効果検証、検証、測定、評価、総括、振り返り、確認、原因追及(究明)など
- (A)改善、対策、やり方の見直し、進化、再設計 など
日頃、皆さんが業務上で使っている言葉も多いでしょう。「戦略」を推進する過程で、メンバー同士が共通言語を理解した上で使うことにより理解が深まり、PDCAの推進と効果が加速します。
戦略で企業を成長させる3つのPDCA
それでは、それぞれの戦略における具体的な実行手順を解説しましょう。3つのPDCAで、着実な成長が見込めます。
1:戦略の実行を担う「アクションプラン」のPDCA
「アクションプラン」のPDCAでは、戦略の確実な実行を狙います。「策定」「実行」「検証・評価」「改善・見直し」のPDCAと、推進表やレポートなどのツールで成果を得ます。すると、推進していくリーダーの成長が見込めます。
アクションプランのPDCAについては、以下の記事に詳しく解説しています。参考にしてください。
2:全社員を成長させる「個人アクションプラン」のPDCA
次に、「個人アクションプラン」でアクションプランを全社員に落とし込みます。「アクションプラン」ではリーダーの成長が見込めましたが、個人アクションプランでは社員とリーダー双方の成長を実現することができます。
個人アクションプランのPDCAサイクルも、基本的にはアクションプランのサイクルと同じです。アクションプランとの違いは、リーダーと部下との間のPDCAをまわしていくところです。
もちろん、PDCAを主体的に回していくのは社員本人ですが、CHECK(検証・評価)のステップでリーダーが上司として関わります。
PLAN―個人アクションプラン策定
会社のアクションプランを元に、そこへ貢献するための自分自身の役割は何かを「個人アクションプラン」として具体的にします。
まずはリーダーが、会社のアクションプランの中で自部門が関わるものをさらに具体的な実行項目に分類し、部下の役割として振り返り、個人アクションプランとするとよいでしょう。
成果指標としては、「個人アクションプラン」に取り組むことでどのような成果をめざすのかを明確にします。これも、できる限り数値で示す目標としましょう。
推進手順は、会社のアクションプランと基本的には同じ考え方で作成します。手順を番号で推進ステップごとに箇条書きで明記し、必ずPDCAのサイクルを盛りこむのがポイントです。
推進スケジュールは、推進手順のステップ番号と実行項目をスケジュールに転記します。3ヶ月分のスケジュールを作成し、四半期毎に見直しながら推進します。
DO―個人アクションプラン実行
推進手順に基づいて、個人アクションプランをそれぞれの社員が実行します。毎月、月初に成果指標の達成度合いや見込みについて書き込むのがポイントです。
また、部門全体や他社と共有した方がよい情報があれば記入します。成果を高めるための課題や改善点なども同様に、上司に提出します。
CHECK―検証・評価
「個人アクションプラン」は毎月振り返りチェックを行います。「チャレンジ面談」という場で、上司であるリーダーと本人の2人で行います。
「チャレンジ面談」では、まず両者が成果指標の確認をして本人が状況報告を行い、上司が支援やアドバイスを具体的に行います。「チャレンジ面談」については、後述する「評価制度」のPDCAを解説する際により詳しく説明します。
ACTION―改善・見直し
必要に応じて推進手順などを修正し、現場で課題や改善、他社との情報共有などに取り組みます。改善・見直しを行った結果、どう変わったかを次の課題として報告し、チャレンジ面談に活かします。
最初は計画通りに実行できない場合もあるでしょうが、まずは上司であるリーダーがPDCAの回し方を習得し、アドバイスしながら進めるのが理想です。徐々に社員が自分自身で目標設定とその解決に取り組めるようになってきます。
3:成果を出せる人材を育てる「評価制度」のPDCA
社員の戦略実行力を高めるために「評価制度」で人材育成に取り組みます。戦略を評価制度に落とし込んで運用することで、戦略を着実に実行する人材を育成することができます。
戦略を落とし込んだ評価制度の作り方については、以下の記事を参考にしてください。私が考案した「ビジョン実現型人事評価制度®」は、企業戦略だけでなく、経営理念や行動理念、事業計画までを落とし込んだものです。これら会社を成長させるのに必須の要素を「評価制度」に盛りこむことによって、社員全員のベクトルが同じ方向を向き、爆発的な推進力を持ちます。
「ビジョン実現型人事評価制度®」の作り方については、以下の記事をご覧ください。
「評価制度」のPDCAは、「評価の実施」「育成会議」「育成面談」「成長目標設定」「チャレンジ面談」の5つで回します。
評価の実施
「本人」「直属の上司」「その上の立場の上司」の3者で評価を行います。上司2人で評価を行うことによって客観性を持たせることができ、評価制度の納得度を高めます。
3者がそれぞれ個別に評価を実施し、評価項目ごとに判断理由を記入するのも、本人の納得度を高めるために大事なことです。
育成会議
「育成会議」とは「直属の上司」と「その上の上司」との間の評価結果のすり合わせの場です。評価者同士の判断基準を揃え、被評価者の育成の方向性を上司同士で共有します。
「育成会議」を行うときは、社長か役員クラスのコーディネーター役を立ち会わせましょう。客観性を保ち、どんな評価者に対しても言うべきことが言える人材であることがポイントです。
育成面談
とくに人材育成の重要な場となるのが「育成面談」です。本人に評価結果を伝え納得してもらい、成長目標を上司と共有する目的があります。
一般的な面談はフィードバックなどと呼ばれ、評価に重点が置かれますが、戦略を推進できる人材を育成することが目的なので、目標の共有にこそ意味があります。
育成面談の詳しいやり方は、以下の記事で解説しています。参考にしてください。
成長目標設定・チャレンジ面談
「チャレンジシート」を作り、被評価者本人が成長目標を設定します。そのうえで毎月上司が「チャレンジ面談」を行い、実施状況を確認、支援します。
「チャレンジシート」の作り方、「チャレンジ面談」の方法については、以下の記事に詳しく解説しています。参考にしてください。
おわりに
以上、会社の戦略を実行し目標を達成する人材育成の仕組みについてお話ししました。この3つのPDCAを回し続けることができている中小企業は、生産性を上げながら成長し続けています。
回し続けることで、最初は成果が出なかった物も改善され、質がアップします。また、戦略実行力のなかった社員も、徐々に実力をつけて成果が出せる人材に育ちます。
しかも、回し続けるのはリーダーたちです。会社全体の成長を促すために、ぜひこれらのPDCAにチャレンジしてください。
自著「小さな会社の〈人を育てて生産性を高める〉「戦略」のつくり方」では、今回したPDCAの回し方をはじめ、中小企業でそのまま使える20の戦略メニューをご用意しています。20の戦略から選んで実行するだけですので、ハードルがぐっと下がります。ぜひお手にとってお読みください。