顧客情報管理・活用の仕組みづくりを実現する4つの手順
会社を爆発的に成長させるための戦略を作りたいと考えたら、まず注目すべきは顧客情報です。顧客情報の最適な管理と活用ができれば、世の中のニーズをいち早くつかんだり、サービスの改善点を的確に知れたりと、利益を上げるためのヒントを学ぶことが可能になります。この記事では、顧客情報管理・活用の仕組みづくりについて解説します。
顧客情報を管理・活用できている中小企業は少ない
私は中小企業で戦略立案を支援しています。支援を始めるとき、まずは社長に次の3つの質問を投げかけます。
- あなたの会社は、すべての顧客を一元管理(情報を1ヶ所に集めて管理し、活用できる状態)できていますか?
- あなたの会社では、営業など顧客と接点を持った人が得た情報やデータを、きちんと記録分析し、有効活用できていますか?
- あなたの会社は、重要度、あるいは緊急性の高い顧客情報がスピーディーに社長まで届いていますか?
私がかかわってきた約680社の中小企業で、3つの質問に「イエス」と答えることができた社長は3%未満でした。こうした実態を見るたびに、早急に手を打たなければ中小企業の生産性は浮上できずに低空飛行を続けてしまうと危惧してしまいます。
すべての企業活動は顧客づくりのために行われていて、顧客に選ばれ続けないと会社は存続できません。顧客情報は、そのための貴重な財産です。先の質問にすべて「イエス」と答えられない社長の会社は、いわば財産に手をつけず放置している、非常にもったいない状態といえます。
裏を返せば、中小企業はこの個別戦略に取り組み、「顧客情報」という休眠資産を掘り起こして活用すれば、大きく生産性を向上させることができます。その意味でも、顧客情報管理・活用の仕組みづくりは、中小企業がまず手をつけるべき重要な個別戦略といえるでしょう。
顧客情報管理の仕組みをつくるための4つの手順
顧客情報管理の仕組みを作るには、次の4つの項目を決めて推進していきます。それぞれ、手順に沿って解説します。
1:顧客情報を一元管理するためのツールを決める
まず、顧客情報やデータを記録するツールを選びましょう。中小企業に一番おすすめしたいツールはExcel(エクセル)です。
「顧客管理」をキーワードに検索すると、クラウドなどのツールやシステムが無数に出てきます。どれも効果的な管理ができ、成果に結びつくと書いてあるので、導入を考える人は多いでしょう。
しかし、それぞれの特徴や管理方法を調べ、検討することに膨大な時間と労力を要したり、自社に合わず使わなくなってしまったり……という話も、よく耳にします。普段からなじみのあるエクセルで管理ができたなら、スムーズにシステムが作れると思いませんか。
エクセルでも関数やマクロを活用すれば、必要なデータ集計や分析を十分行うことができます。本格的なシステムに移行する段階になったとき、エクセルデータをそのまま移行できる場合も多いものです。顧客管理のツールはエクセルからスタートしてみましょう。
2:どんな顧客情報を収集すればよいのか項目を決める
次に、収集、記録する顧客情報の項目を決めます。検討の場には社長も参加し、リーダーと一緒に話し合ってください。経営や会社の方向性の判断に必要な情報項目は、社長からしか出てこない場合があるからです。
営業や接客、問い合わせ対応に携わっている現場の社員からの意見も吸い上げ、参考にしながら決めると良いでしょう。項目が決まったら「1」で決めたツールに入力し、フォームを作成しておきます。
3:顧客情報の管理方法を決める
「1」「2」のステップで顧客を収拾するためのフォームができました。次に「誰が」「いつ」入力して「どこで」保存するかを決めます。
「誰が」については、営業担当者が入力するのか、ほかの営業事務などを担当者とするのか、全社員が入力するのかを決めます。明確に決めておくと、記入漏れや重複がありません。
「いつ」については、どんなタイミングで情報を更新していくのかルールを決めます。顧客情報が得られた時点ですぐに入力するのか、毎日1回入力する時間を持つのか、週に1回まとめて入力すればよいのかなどです。
「どこで」は、顧客データの管理場所とその方法です。例えば、エクセルの顧客ファイルを社内のサーバーに保存するのか、クラウド上で管理するのか、顧客情報を入力した後にプリントアウトしてファイリングし、棚に保存するのかなどのルールを決めます。
4:顧客情報の共有、活用のルールを決める
「いつ」「誰が」顧客情報を見て、「誰と」「どうやって」共有するのか、ルールを明確にしましょう。収拾、蓄積したデータは活用されなければ意味がありません。効果的に活用するためには、上司や社長、関連部署の社員と共有し、売り上げアップや新商品販売につながるアイデアを出すことが重要です。
考えられるルールは、主に以下の3つです。
- 営業社員が自ら更新した顧客情報を、メールで社長、営業部長、商品企画部門全員に知らせる
- 情報を共有してほしいリーダーや部署の社員から、顧客管理データへ週1回必ずアクセスし、活用アドバイスのコメントを入れる
- 営業企画会議で議論の時間を設け、実行する活用方法を決める
もちろんルールは会社独自のもので結構です。こうして実行することで、顧客情報は活きたものになってきます。
おわりに
顧客がサービスを利用した痕跡を、そのまま放っておいては宝の持ち腐れです。データとして管理し、活用することで、会社を成長させるかけがえのない情報源になります。
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