社員の意識改革を実現する3つのポイント、社員の意識を変えるPDCAの回し方
「社員のモチベーションを高めたい」「もっと責任感を持って仕事をしてもらえるよう意識改革をしたい」と悩むなら、PDCAの回し方を工夫しましょう。リーダーを成長させるためのプランや、全社員が戦略を実行できるプランのPDCAを回すことで、理想の人材づくりを推進していくことが可能になります。会社のさらなる躍進のため、社員の意識改革を実現するポイントについて解説します。
社員の意識改革を実現するポイントは3つのPDCA
PDCAとは、「PLAN=計画」「DO=実行」「CHECK=検証」「ACTION=改善」の4つのプロセスをいいます。仕事の現場でPDCAを繰り返し行うと、仕事の内容はブラッシュアップされ、より効率的に、高いスキルで仕事ができるようになります。
より仕事に密着した言葉で言い換えれば、Pは「実行計画」や「企画」、「活動計画」、「プランニング」としてもいいでしょう。Dは「実施」「実行」「推進」などとも言い換えられます。Cは「効果測定」「評価」「振り返り」「総括」「原因究明」、Aは「改善」「やり方の見直し」「対策」再設計」など。
つまり仕事におけるPDCAとは、何らかの狙いを定めて計画を練り、推進し、実施が終了したら振り返りを行い、次に向けた改善策を提示する一連の流れをいいます。なかでも社員の意識改革を行うためには、これからご紹介する3つのPDCAを回すことが効果的です。
「経営計画発表会」を開催して意識改革の準備
PDCAを具体的に回す前に、まずは「経営計画発表会」で意識改革の準備をする必要があります。
経営計画発表会の目的は2つあります。1つは、全社員に会社の考え方を理解・共感してもらうこと。もう1つは、社長とリーダーが決意を表明することです。
会社が3つのPDCAで何を目指すのか、目指すべきゴールをきちんと伝えておけば、社員は全員ゴールの方を向いてPDCAを邁進できます。目指すゴールがわからないままでは、社員はどうやって意識を高めればよいかわからないでしょう。
また、リーダーに説明会で各種説明を任せれば、リーダーが何に取り組み、どのような成果を実現するのか自ら宣言することができます。実行管理におけるリーダーの責任感を育てるには、とても良い方法です。
納得して働いてもらえるように伝えることも大事ですし、会社にとってのメリットだけでなく、社員自身のメリットにつながるということまで話ができるのがベストです。
「経営計画発表会」の具体的な方法については、以下の記事をご覧ください。
意識改革を実現する3つのPDCAの回し方
社員の意識改革を実現するのは、「アクションプラン」「個人アクションプラン」「評価制度」の3つのPDCAです。「アクションプラン」はリーダーを成長させることに、「個人アクションプラン」と「評価制度」は全社員のモチベーションを上げることに効果をもたらします。
社員の意識改革は、コツコツと堅実なプランの実行と、反省を踏まえたブラッシュアップを続けていくことで叶います。ぜひ、3つのPDCAを会社の屋台骨の1つと捉え、確実に回していってください。
では、3つのPDCAの回し方を詳しくご紹介します。
PDCAその1:アクションプランでリーダーを成長させる
「アクションプラン」とは、戦略を実行して成果を出すために必要な、実行計画のことです。まずは企業として成果を出すための戦略を決め、その戦略を具体的に進めていくためには「いつまでに」「どのようにして」具体的な作業を抜き出し、「誰が」それを実行するのかを設計する必要があります。これらの実行項目や内容、推進手順をスケジュール化したものが「アクションプラン」です。
アクションプランのPDCAを回すのは、各部署で社員を取りまとめているリーダーです。アクションプランに基づいてリーダーが各社員に仕事を割り振り、スケジュールを管理し、実行した後の反省点を社員側から吸い上げます。
アクションプランのPDCAを回せば回すほど、リーダーに人を動かす側としての責任感が生まれ、育っていきます。優秀なリーダーがなかなか育たない、リーダーの意識改革をしたいと悩む経営者の方には、とくにおすすめです。
アクションプランのPDCAサイクルは、次のように進めます。
- PLAN(計画):成果までのストーリーづくり
- DO(実践):ストーリー通りに動かす難しさを知る
- CHECK(効果検証):定期的なチェックの重要性を学ぶ
- ACTION(改善・見直し):アクションプラン改善で仕事の質の向上方法を学ぶ
日々の業務に加えて新たな業務を行うわけですから、最初は思うようにいかないでしょう。リーダーがDO(実践)の難しさを知ることもPDCAを回すうえで大事なことです。ストーリー通りに動かす難しさを知ったうえでリーダーが自ら考えて工夫することができれば、自ずと成長していくでしょう。
実践をする前に、リーダーが部下に対してきちんとアクションプランの目的や必要性を説明しておくことも大切です。
具体的なPDCAの回し方については、以下の記事をご覧ください。
PDCAその2:個人アクションプランで全社員が戦略を実行
2番目のPDCAは、個人アクションプランのPDCAです。先ほどご紹介したアクションプランは、会社の戦略を実行するためにグループで行うものですが、個人アクションプランは、アクションプランを社員一人一人の役割に落とし込むものです。
アクションプランのPDCAはとくにリーダーを成長させるものでしたが、個人アクションプランのPDCAを回せば、社員とリーダー双方の成長を実現できます。社員は自分にどんな役割が求められているのかを日々自覚しながら仕事をすることができますし、アクションプランを社員それぞれと一緒に見直すことで、リーダーにも人を育成する力が身についていきます。
その1のアクションプランとの違いは、個人アクションプランではリーダーと部下の間でPDCAを回す点です。主体的に回すのは社員本人ですが、CHECK(効果検証)の段階でリーダーが上司として関わります。
個人アクションプランの「P(計画)」
個人アクションプランの「P(計画)」は、会社のアクションプランに基づき、社員一人一人がどのようなことに取り組むのか明確にすることが大切です。個人アクションプランを記入し、進捗を管理していくために「チャレンジシート」を用意しましょう。
チャレンジシートのつくり方は、以下に解説しています。参考にしてください。
個人アクションプランの「D(実行)」
個人アクションプランの「D(実行)」では、チャレンジシートに沿って業務を遂行します。計画したことがうまくいかない場合も、社員自身が考えて工夫することで大きな成果や発見が得られることがあります。それは、会社としてかけがえのない財産です。
個人アクションプランの「C(検証)」
個人アクションプランの「C(検証)」では、リーダーと社員がともにチャレンジシートを見直しながら現状把握を行います。少なくともひと月に1回は見直しを行うのがおすすめです。
個人アクションプランの「A(改善・見直し)」
個人アクションプランの「A(改善・見直し)」では、チャレンジシートにリーダーがコメントとしてアドバイスを残すことで改善を促します。さらに、本人と面談するのが望ましいでしょう。評価のための面談ではなく、今後どのように改善していけばよいかを話し合うポジティブな場であると意識しましょう。
チャレンジ面談の実施方法もチャレンジシートの解説記事で紹介しています。
PDCAその3:評価制度で理想の人材づくりを推進
意識改革に有効なPDCAの3つ目は、評価制度のPDCAです。アクションプランや個人アクションプランには、社員がどのような人材になるべきか、どんなことをどんなステップで身に着けていけばよいかが明確にされていません。これを実現するのが、評価制度です。
手順として、「経営計画」から「評価基準」に落とし込み、そして運用する、すなわち3つ目のPDCAである「評価制度のPDCA」をまわしていきます。
経営計画の作り方は以下の記事を参考にしてください。
「経営計画」からは、以下の4つの視点を「評価基準」に落とし込みします。
- 10カ年事業計画
- 戦略
- 人材育成目標
- 行動理念
└ 会社の「売上」「粗利益」「経常利益」などの会社数値目標を達成するために部門や社員に求める業績数値項目を落とし込む
└ 「戦略」「アクションプラン」を確実に実行するために必要な仕事、能力を落とし込む
└ 「ギャップを埋めるために必要な課題」をクリアし、「10年後の社員人材像」となるために必要な能力やスキル、知識を落とし込む
└ 「行動理念」で示された指針、考え方、姿勢を現場で実践するにはどう行動したらよいかを落とし込む
これら4つの視点を落とし込んだ評価基準を作成し、運用することにより、社員を経営計画に沿って行動できるように導きます。
評価制度のPDCAは、評価の実施を行った後、評価結果を伝えてそれに基づいた成長のための目標を上司と本人で共有する「育成面談」で行います。こうして会社の望む方向へ人材を育成していけば、自ずと意識改革は進むでしょう。会社のビジョンを盛り込んだ人事評価制度の運用が、人材を成長させ、会社を成長させていくのです。
以下の記事で、育成面談で部下のモチベーションを高めるポイントを詳しく紹介しています。
評価制度で社員の意識改革を実現
評価制度といえば、社員の給与を決めるものという意識を持っている人も少なくないでしょう。しかし、本来、評価制度は会社のビジョン実現に向けて社員の成長を支援していくためのものです。評価制度の運用によって、全社員の成長が、会社が求めるレベルに達しているのかを把握できます。意識改革が進んでいるかどうかをチェックするツールとしてぴったりな評価制度を作り、運用しましょう。
私は、会社が望む方向に社員を成長させ、強い組織をつくることができる人事評価制度として「ビジョン実現型人事評価制度®」を提唱しています。会社の理念やビジョン、10年後の目標、目標を達成するための計画などをすべて評価制度に落とし込むのです。
「ビジョン実現型人事評価制度®」の詳細なつくり方について、具体的には以下の記事をご覧ください。
おわりに
社員の意識改革は、経営層の本気が伝わらなければなかなか進みません。「こんな会社にしたい」「こんな人材になってほしい」を強く伝えられるのが、冒頭に紹介したような経営計画発表会であり、人事評価制度です。
さらに、制度やプランを作成するだけでなく、PDCAをしっかり回していくことで、より社員の意識改革は進みます。もしも会社独自のアクションプランなどがすでにあるようなら、一層社員を成長させるものへとブラッシュアップし、コツコツPDCAを回していくのがおすすめです。
今回紹介した3つのPDCAの回し方は、拙著『小さな会社は経営計画で人を育てなさい』にてより詳細に解説しています。社員の意識改革に取り組みたい方は、ぜひ手にとってお読みください。