株式会社勉強堂
代表:代表取締役 與田拓平今回は、宮崎県宮崎市・都城市、熊本県に女性向け雑貨店「PURA VIDA(プーラ・ビーダ)」を5店舗展開している「株式会社勉強堂」様をご紹介します。扱う商品は、化粧品やキッチン雑貨、子供服、ステーショナリーなど。顧客の95%以上が女性です。宮崎市にも全国チェーンの雑貨店出店が続く中、市内の女性4人にひとりがPURA VIDAの顧客という、圧倒的地域No.1企業です。
2018年に與田守孝現会長から與田拓平現社長への事業承継を実現した勉強堂様。今回は、事業承継という企業にとって大きな転換期によってもたらされた変化と、勉強堂様が事業とともに継承された考え方・取り組みをご紹介したいと思います。
株式会社勉強堂は、2004年からビジョン実現型人事評価制度®の取り組みを開始し、創業から55期を迎えた2018年に、社長の與田守孝(現会長)から当時取締役であった私に事業承継を行いました。
承継期日と計画を、與田現会長が山元さん、池尻さんと相談し、継承の3年前から、会長の右腕である常務の鬼束を含めて打合せを重ね、私自身も会長とともに様々な業界団体、交流会や勉強会に同行し、社長業に必要な考え方を吸収してきました。
学びを大切にしているのは、創業当時からの核となる考え方で会社名の由来となっています。今後も私自身が率先して「勉強」することで、スタッフにもこの考えを伝えていきたいと思います。社長就任の挨拶では、スタッフへ丁寧に思いを伝えることで、鬼束常務や店長をはじめ、全スタッフが耳を傾けてくれ、理念とビジョンを一緒に実現していこうという思いを共有できました。近年では、山元さんが講師を務められている「後継者・NO.2育成塾」等の勉強会にも積極的に参加し、様々な学びを現場に反映できるよう日々試行錯誤しています。
会長 與田守孝様
常務取締役 鬼塚こころ様
2004年にスタートしたプロジェクトは、事業承継後も勉強堂における「人づくり」「商品づくり」「店づくり」において、重要な取り組みとして継続しています。スタート時は、3期連続で赤字が続き、財務状況も厳しい状態でした。歯止めがかからない顧客減少により、売上げはピーク時の6割程度にまで落ち込んでいました。
スタッフからの不満と不安の声が聞こえてくる中、鬼束常務は当時を振り返り、「給料日に給与が支払われるのか、真剣に心配した」と話します。そんな状況からビジョン実現型人事評価制度®への取り組みを開始し、これまでトップダウンだった経営スタイルから、スタッフ全員で経営計画を実践するスタイルに転換していきました。プロジェクトスタート時よりこの改革に参画し、與田会長の右腕として手腕を発揮してきた鬼束常務ですが、実は入社当時はパートスタッフでした。そんな彼女が、経営計画とビジョンの明確化、郊外路面店による多店舗計画の展開と人事評価制度の運用とともに頭角を表したことで、統括マネージャーへ抜擢されました。さらに、山元さんから将来の組織づくりを見据えたアドバイスもあり、2012年には常務取締役へと昇進し、勉強堂を象徴する人財となりました。
スタッフ全員で與田現会長が掲げる理念とビジョンに向けてアクションプランと評価制度を実践し続けた結果、当時18名だったスタッフは現在約70名となり、売り上げは5倍に成長。現在も、導入時より運用を止めることなく継続し、人事評価制度の納得度調査において、「十分納得できた」の割合が70%を超える状態を維持しています(アンケートは「十分納得できた」「ほぼ納得できた」「納得できない」の3択で、他社の「十分納得できた」の割合は平均45%)。
2020年から現在も、まだまだ見通しの立たない新型コロナウィルスに、勉強堂も立ち向かっています。近隣への大型イオンモールや競合店の出店、ネット通販の台頭などにより、競争が激化する業界の中で、ブランドイメージを伝える店舗空間と対面接客を通じて、お客様にライフスタイルの提案を継続し、この未曾有の事態にも売上と利益を高めることに成功しています。
スタッフ全員で徹底して取り組んできた地域密着型の顧客管理と顧客育成(ファンづくり)戦略によってコアなファンをつかみ、コロナ禍においてもお客さまとのコミュニケーションを絶やさず実践し続けたことで、自粛期間が追い風となって、購買数を落とすどころか、コロナ禍以前よりも成果を上げることができました。 また、コロナ以前の2019年から、女性スタッフが98%という組織課題の解決に向け、営業時間を2時間短縮(西熊本店のみ1時間短縮)し、スタッフの仕事の棚卸、残業削減に取り組むなど、「働き方改革=生産性向上」に力を入れ始めていたことも環境変化に対応できた要因になりました。
生産性向上に取り組みたいと考えている企業様が多いかと思いますが、弊社は経営計画と人事評価制度で全スタッフにわかりやすく方法を示したことが成果に結びついた要因だと考えています。
具体的には、経営計画の中で、理念やビジョンとともに、「一人一人が考える集団」をスローガンとして掲げ、限られた時間や環境の中でも、「どうすればお客様に満足していただける商品・サービスを提供できるか」という意識の醸成を組織全体の仕組みに落とし込んで実践しています。
また、人事評価制度も、組織の成長と経営計画の変化にあわせて、改めて2020年より各グレードに求める役割を引き上げ、評価基準の内容を一新しました。全スタッフが新しいグレードイメージに沿ってS2(一般スタッフ)から自己評価を行い、自身の現在地の再確認をしています。2021年に入り、賃金制度の改定にも着手し、2019年から開始した働き方改革の成果を確認できたことで、パートスタッフも含め、平均105%の昇給を決断。10年以上勤務するスタッフは、「どんどん働きやすい環境が整ってきている」と言ってくれています。新型コロナウィルスの渦中にあっても成長し続ける強い企業へと少しずつ成長してきていると実感しています。
事業承継をきっかけに、会長と私が改めてビジョンを見直し、勉強堂のビジョンは、「日本一」から「世界NO.1」へと進化しました。宮崎と熊本で働くスタッフにとって、視野を大きく広げるビジョンとなり、私の「今のやり方にとらわれず、柔軟な発想でこのビジョンを実現していきたい」という就任時のメッセージは、社員にも多少のインパクトは与えたのではないかと振り返っています。
私は、会社が成長していく一方、店舗やスタッフが増えていくにつれ、徐々に「勉強堂が大事にしてきた理念と考え方が薄れていくのではないか」という危機感を感じ、社長就任後、すぐに理念・フィロソフィの勉強会を開始しました。勉強会の開始から2年半が経過した今では、店長たちがスタッフへ勉強堂フィロソフィを発信し、各店舗で浸透してくれる状況になってきています。
会長の時代から18年間、ビジョン実現型人事評価制度®の実践を通じてリーダー育成を継続してきたことで、私の新しい取り組みにもすぐに応えられる環境になっていたしているのです。
また、会長と私が大事にしている「スタッフの幸せ」を実現すべく、アクションプランの一環として「ひなた部」という独自の活動を立ち上げ、スタッフが互いに承認し合う仕組みづくりや、料理などの趣味をサークルとして取り組める環境を整備するなど、スタッフの幸せを応援する取り組みが始まりました。給与水準のアップと合わせて、精神的にも経済的にもスタッフが豊かになれる会社を目指して変化を続けています。
今後も日本人事経営研究室さんにもご協力いただき、理念とビジョンの実現に向けて進化していきたいと思います。